「はい、はい!」早乙女恵子は涙を拭った。
嶽本岳真も非常に動揺していて、泣きそうな顔で言った。「蒼井さん、うちの子は大丈夫でしょうか?もし何かあったら、私たち夫婦も生きていけません!」
「嶽本さん、家長として冷静になってください」蒼井華和は穏やかな口調で、特別な魔力を帯びた声で言った。「あなたは奥さんと子供、そして家族の唯一の精神的支柱なのですから」
嶽本岳真はこの言葉を聞くと、すぐに涙を拭い、気を取り直した。
蒼井華和の言う通りだった。
子供はまだ大丈夫なのに、もし自分が倒れたら、母や妻、子供はどうなるのだろう?
すぐに、三人はICU病室の入り口に着いた。
蒼井華和は看護師の案内で無菌着に着替えに行った。
無菌着に着替えた後、子供に鍼治療を始めた。
鍼治療の過程はゆっくりと進んだ。
この間、嶽本岳真と早乙女恵子の夫婦はずっとICUの入り口で待っていた。
二人は蒼井華和が針を刺すたびに、子供の各項目の数値が安定していくのを少しずつ見守っていた。
夫婦は互いに顔を見合わせ、それぞれの目に驚きの色を見出した。
この蒼井神医は本当に凄いようだ。
医師の事務室。
看護師が資料を届けに来た。
久世先生が振り返って、「今日も嶽本颯太の両親が頼んだ名医が来たのか?」
「はい、久世先生」看護師は頷いた。
それを聞いて、久世先生は少し困ったような表情を見せた。「まったく無茶な話だ!」
嶽本颯太の病気は急性症状で、原因すら分かっていないのに、漢方医が適当に針を打つだけで治るのか?
看護師も困惑した様子で、「病気に追い詰められて藁をも掴む思いなんでしょう」
相手には医療資格証も医師免許証もあり、患者の家族からの免責同意書もある。
すべての証明書が揃っているので、病院側も止める立場にはない。
最も重要なのは、嶽本颯太の状態が複雑で、病院側に具体的な治療方針がないことだ。死を待つよりは、他の人に試してもらった方がまだましかもしれない……
しかし病院側が予想もしなかったのは、彼らが頼んだのが漢方医だったということだ。
しかも経験の浅い漢方医というのは……
これは少し理解し難いことだった。
傍らの別の医師が話に加わった。「ICUの子供のことか?」
「そうだ」久世先生は頷いた。