彼は自分の仕事を愛していた。
いつでも、どこでも、仕事や同僚が彼を必要とする時、彼は躊躇なく応じた。
葉山雄大は蒼井邸の小庭園を見つめながら、表面は落ち着いているように見えたが、内心は激しく動揺していた。
小庭園と呼ばれてはいるものの、二反ほどの広さがあり、至る所で庭師が植物の手入れをしていた。初秋の時期で、赤いバラが風に揺れていた。
そよ風が吹き、花の香りが漂ってきた。
特に良い香りだった。
もし彼女が蒼井家に嫁ぐことができれば、この庭園の女主人となり、蒼井智輝の全てが彼女のものとなる。
蒼井家の使用人たちも、彼女を奥様と呼んで敬意を表するだろう。
そう考えると、葉山雄大の心臓の鼓動が速くなった。
蒼井智輝に出会えたのは、なんという幸運だろうか。
彼女は蒼井智輝をしっかりと掴んでおかなければならない。他の女性に機会を与えてはいけない。