少女は十七、八歳くらいで、黒いワンピースを着て、同じ色のベルトを腰に巻いていた。
もともと細い腰は、今や手で包めそうなほど華奢だった。
Vネックのデザインで、雪のように白い肌と美しい弧を描く白鳥のような首が覗き、黒髪は後ろに流れ、談笑する度に優雅に揺れていた。
その気品は、ランウェイのモデルをも凌駕するほどだった。
春日吉珠は彼女を見て、心が大きく揺さぶられた。
河内市にこんな美しい少女がいたのだろうか?
少女は久世先生の方を振り向いて、「久世先生、お仕事に戻ってください」と言った。
「では失礼します。蒼井さん、何かありましたらLINEでご連絡ください」
「はい」
蒼井華和は軽く頷いて、その場を去った。
蒼井華和が去るのを見送った久世先生は、小走りで春日吉珠の元へ来て、「蒼井奥さん、いらっしゃいましたか」と声をかけた。
春日吉珠は頷き、「こちらは母です」と言った。
そして蒼井大婆様に向かって、「お母さん、こちらが河内市で最も有名な医師の久世遥志先生です」と紹介した。
蒼井大婆様は久世遥志を見て、笑顔で「久世先生、はじめまして」と挨拶した。
「大婆様」
久世遥志は「どうぞ」と手で示し、「こちらへ」と案内した。
三人は歩きながら会話を続けた。
久世遥志は「大婆様、どちらがお悪いのですか?」と尋ねた。
春日吉珠が答えた。「母が咳が止まらないんです」
久世遥志は頷いて、「咳は大きな問題ではありませんが、ご高齢の方は若い人と比べて免疫システムが弱くなっていますので、一度総合的な検査をさせていただきましょう」
「はい、お願いします」春日吉珠は久世先生を全面的に信頼していた。
蒼井大婆様は蒼井華和が去った方向を振り返り、久世遥志に尋ねた。「久世先生、先ほどの若い女性はお妹さんですか?」
医師になるには最低でも博士号が必要だ。
あの少女は多く見積もっても十七、八歳に見えたので、医師であるはずがない。
久世遥志は笑いながら首を振った。「彼女は伝統的な漢方医学の継承者で、医術は素晴らしいものです。先ほど医学について議論していたところでした」
伝統的な漢方医学。
この言葉を聞いて、蒼井大婆様の目に敬意の色が浮かんだ。
若い少女なのに、こんなにも優れているとは。