102:祖孫_3

「名前はなかなかいいわね」と蒼井大婆様が言った。

三人は歩きながら、話を続けていた。

とても和やかな雰囲気だった。

春日吉珠は何かを思い出したように、続けて尋ねた。「そういえば、昨夜はどうしたんですか?紫苑に対してかなり怒っていらっしゃいましたよね」

当時、春日吉珠は蒼井大婆様とビデオ通話をしていて、蒼井大婆様が大変怒っているのを見ただけで、その後蒼井大婆様は急いで通話を切ってしまった。

その件について、蒼井大婆様はため息をついて、「お兄さん夫婦は十八年かけて厄介者を育ててしまったわ!」

春日吉珠は目を丸くして、「お母様、どうしたんですか?何か誤解があるんじゃないですか?」

蒼井大婆様はそれ以上多くを語らず、ただ昨夜起こったことを春日吉珠に話して聞かせた。

それを聞いて、春日吉珠は蒼井大婆様を見つめ、続けて言った。「お母様、何か誤解があるんじゃないですか?紫苑はそんな人には見えませんし、本当に知らなかったのかもしれません」

春日吉珠の蒼井紫苑に対する印象は悪くなかった。

見た目が良く、話し方が上品で、成績も優秀。

典型的なお嬢様だった。

言い終わると、春日吉珠は続けて言った。「お母様、私は紫苑の味方をするわけではありませんが、彼女にそんなことをする必要がないと思うんです。今や彼女は蒼井家のお嬢様で、兄夫婦も実の子のように可愛がっているのに、そんなことをすれば自分で面倒を招くだけじゃないですか?それに、琵琶膏と梨肉のスープは確かに咳止めに効きますし」

蒼井智輝が続けて尋ねた。「おばあちゃん、彼女がやったという証拠はあるの?」

蒼井智輝は法律を学んでおり、物事は証拠に基づいて判断する。

証拠がない状況では、蒼井大婆様が何を言っても無駄だった。

「証拠はないけれど、私にはわかるの。この件は彼女と無関係ではないわ」ここまで言って、蒼井大婆様は目を細めた。「私も不思議に思っているのよ。彼女は一体なぜこんなことをしたのかしら?」

とても不思議だった。

確かに証拠はないのに、蒼井大婆様はこの件が必ず蒼井紫苑と関係があると感じていた。

蒼井智輝は蒼井大婆様を見つめて、「おばあちゃん、どんな場合でも証拠が必要だよ。そうでないと誹謗中傷になってしまう」

蒼井智輝は典型的な理系男子で、思考が緻密で、発言や行動に証拠を重視する。