時雨晴斗は笑って言った。「確かに従兄とは少し意見が合わないんです。それをお見抜きになったんですね」
「そうよ」須藤大婆様は満面の笑みを浮かべて、「私には見抜く目があるのよ!で、二人は何で意見が合わないの?」
時雨晴斗は事情を須藤大婆様に説明した。
それを聞いて、須藤大婆様は首を振った。「あの子ったら、典型的な帝王の器じゃないのに帝王病にかかってるのよ!誰を見ても策略があると思い込んでる!本当に策略がある人は見抜けないくせに、時々頭を歪めてやりたくなるわ!」
須藤大婆様は本当に怒っていた。
蒼井華和のような素晴らしい娘を、須藤悠翔は拝金主義者だと決めつけた。
そう言って、須藤大婆様は時雨晴斗の手を取った。「晴斗、従兄に惑わされちゃダメよ。この世界にそんなに策略家の女性なんていないわ。おばあちゃんは、あなたが勇気を出して恋をすることを応援するわ!」
「本当ですか?」時雨晴斗は意外そうに須藤大婆様を見つめた。
須藤大婆様は頷いた。「もちろんよ!」
「ありがとうございます、おばあちゃん!」
須藤大婆様は続けた。「でも勇気を出して恋をする前に、昔の悪い癖は直さないとね。その子に一途に向き合わなきゃ。お互いに向かい合う愛こそが意味があるのよ」
「はい」時雨晴斗は頷いた。
......
翌日の昼。
蒼井大婆様が飛行機を降りた。
到着ロビーに出ると、春日吉珠母子が待っているのが見えた。
「お母さん!」
春日吉珠は四十を過ぎていたが、手入れが行き届いているため実年齢が分からず、息子と並んでも姉弟に見えるほどだった。
蒼井大婆様はキャリーケースを引いて近づいた。
蒼井智輝は前に出て蒼井大婆様からケースを受け取った。「おばあちゃん、どうして介助の人を連れてこなかったんですか?」
「必要ないわ。まだそこまで年を取っていないわよ」
春日吉珠は蒼井大婆様の腕を支えながら、笑って言った。「お義姉さまも一緒に来られると思っていたのに、お一人でいらっしゃるなんて」
「あの子に来てもらう必要なんてないわ。私一人でも道は分かるわ」
春日吉珠は続けた。「お義姉さまは先日も河内市に来られたそうですね。遠慮なさりすぎです。こちらまで来られたのに、お家にも寄らずに」