108:華和の一手_2

【はい。】

メッセージを返信し終わると、朝比奈瑠璃の気分は一気に回復し、脇に置いていたまんたんを手に取り、美味しそうに食べ始めた。

味のないまんたんなのに、彼女は何か珍味でも食べているかのような表情を浮かべていた。

如月家。

早坂明慧はリビングのソファに座ってマフラーを編んでいた。

彼女は機嫌が良く、小さな歌を口ずさんでいた。

矢野花音は彼女のその様子を見て、少し不思議そうに眉をひそめ、早坂明慧の横に座って、笑いながら言った:「お母さん、何かあったんですか?こんなに嬉しそうで。」

「え?私、そんなに嬉しそう?」早坂明慧は長男の嫁を振り返って見た。

「そうですよ、お母さんの口元が耳まで届きそうなくらい笑ってますよ!」矢野花音は笑いながら言った。

早坂明慧はまだ気づいていなかった、「そう?」

矢野花音は頷いて、続けて尋ねた:「いつセーター編みを覚えたんですか?」

「セーターなんて編めないわよ、これはマフラーを編んでるの。」

矢野花音は続けて言った:「それでもすごいですね。」

早坂明慧は言った:「マフラーは簡単よ、あなたも習う?」

矢野花音は慌てて手を振った。

彼女にそんなの覚えられるはずがない。

「三男のために編んでるんですか?」

矢野花音は分かっていながら聞いた。

「違うわ。」早坂明慧は首を振った。

矢野花音は非常に驚いて、「じゃあ、誰のために編んでるんですか?」

本当に珍しい。

「華和のためよ。」早坂明慧は答えた。

華和?

矢野花音は一瞬固まり、そして反応した。早坂明慧の言う華和とは蒼井華和のことだろうか?

「お、お母さん、蒼井華和のことですか?」矢野花音は非常に不確かに尋ねた。

早坂明慧は頷いて、「そうよ。」

矢野花音は喉を鳴らし、とても驚いた。

彼女には理解できなかった。

早坂明慧はいつから蒼井華和とそんなに仲良くなったのだろう?

もしかして......。

美容丸のせい?

矢野花音は続けて言った:「お、お母さん、前は蒼井華和のこと嫌いだったじゃないですか?」

「それは前に彼女のことを誤解していたからよ、」以前のことを思い出し、早坂明慧は実際とても後悔していた、「華和はとても良い子よ、廷真が彼女と結婚できるのは、廷真の幸せね。」

矢野花音はその場で固まってしまった。