108:華和が動く_3

「お母さん!」

「同じことを二度言わせるの?」早坂明慧は眉をひそめた。

矢野花音はすぐに口を閉じ、階段を上がっていった。

彼女は次男の部屋の前に来て、ノックをした。

「月蓉、いる?」

「ドアは開いてるわ、お義姉さん。そのまま入ってきて」中から篠崎月蓉の声が聞こえた。

矢野花音はドアノブを回して、中に入った。

篠崎月蓉はヨガの練習をしていた。

長年ヨガを続けているせいか、彼女の体型は完璧で、柔軟性も抜群だった。

矢野花音は羨ましくて、一瞬怒りも忘れて思わず尋ねた:「月蓉、どうやってこんなに続けられるの?しかもこんなに長い間」

彼女もヨガをやったことがある。

でも三ヶ月しか続かなかった。

だから体型も矢野花音ほど維持できていない。

篠崎月蓉は笑いながら言った:「慣れればいいのよ。お義姉さん、何か用?」

矢野花音はやっと本題を思い出し、続けた:「ねえ、今お母さんが下で何をしてたと思う?」

「何してたの?」篠崎月蓉は尋ねた。

矢野花音は言った:「マフラーを編んでたのよ」

ここで、彼女は付け加えた:「でも重要なのはマフラーを編んでたことじゃなくて、誰のために編んでたと思う?」

「三男様よ」

如月家では誰もが知っていた、早坂明慧が如月廷真を一番贔屓にしていることを。

家に何か良いものがあれば、早坂明慧は真っ先に如月廷真のために取っておこうとする。

「今回は違うわよ!」矢野花音は言った。

篠崎月蓉は軽く笑って、「じゃあ誰なの?まさか長男様じゃないでしょう?」

「そんなわけないでしょ!」

「じゃあ誰?」篠崎月蓉は非常に興味を持った様子で、「お義姉さん、もう言ってよ。謎かけはやめて!」

矢野花音は言った:「蒼井華和よ!蒼井華和!」

これを聞いて、篠崎月蓉も非常に驚いた。

蒼井華和?

「蒼井家の者が一番嫌いじゃなかったの?」篠崎月蓉は言った。

「誰が彼女の考えてることを理解できるっていうの!」矢野花音は腕を組んで、「私が少し言っただけで、不機嫌になったわ!」

篠崎月蓉は目を細めた。

「美容丸のせいかもね?」

早坂明慧だけでなく、美容丸の一件は彼女にも大きな衝撃を与えた。

今でも篠崎月蓉は後悔している、なぜ美容丸を使用人にあげてしまったのかと。

まるで頭がおかしくなっていたみたいだった。