篠崎月蓉は慰め続けた。「まあいいわ、家を取り仕切る権利がなくても、私たちはのんびり過ごせるわ」
「月蓉、本当に納得できるの?」
このような莫大な富の前で、誰が本当に納得できるだろうか?
「納得できなくても、どうしようもないでしょう?」篠崎月蓉は反問した。
矢野花音はため息をついた。
そうね。
彼女にも何ができるというの?
篠崎月蓉は続けた。「私たちは三男に騙されたのよ!」
矢野花音は唇を噛んだ。「あの役立たず、他の才能はないくせに、家族を陥れる才能だけは一流ね」
「実は、今の状況も完全に覆せないわけじゃないわ」と篠崎月蓉は言った。
それを聞いて、矢野花音はすぐに尋ねた。「何か良い方法があるの?」
篠崎月蓉は口角を上げた。「お姉さん、家に帰って兄さんと相談してみない?私たちで手を組むのはどう?」
手を組む?
矢野花音は笑って言った。「月蓉、何を言ってるの?私たち兄弟や義理の姉妹がいつから敵同士になったの?」
暗闘は暗闘として。
表立って言えないことがある。
一度明らかにすれば、物事は変質してしまう。
この矢野花音も馬鹿ではない。
矢野花音は続けた。「月蓉、もう話すのはやめるわ。この時間なら、あなたの夫も帰ってくるでしょう」
「ええ、お姉さん、お気をつけて」
矢野花音は身を翻して去っていった。
篠崎月蓉は矢野花音の背中を見つめ、目を細めた。
矢野花音は寝室に戻った。
案の定、如月廷臣は帰っていた。
矢野花音は今日起こったことと篠崎月蓉との会話を如月廷臣に全て話した。
それを聞いて、如月廷臣は言った。「口は災いの元だ。篠崎月蓉も手ごわい相手だ。彼女に利用されて、お前が損をするだけだぞ!」
「今回は彼女が私を利用しようとしているんじゃなくて、あなたの弟が私たちを利用しようとしているのよ!」
如月廷臣は如月廷真を全く眼中に入れておらず、顔には嘲笑の表情を浮かべた。「三男のことか?」
「他に誰がいるというの!あなたは今日のお母さんの態度を見てないでしょう!」
考えるだけでも腹が立つ。
義母は扱いにくいだけでなく、えこひいきもする。
如月廷臣は続けた。「たとえ父も母も祖父も会社をあの役立たずに渡したいと思っても、彼に任せられると思うのか?たとえ彼に任せられたとしても、会社の株主たちが納得するだろうか?」