朝比奈瑠璃はそのまま蒼井華和を見つめていた。
完全に呆然としていた。
彼女は黒いジャケットに黒いレザーパンツを着て、足には同じ色のマーティンブーツを履いていた。
全身から野性的な不良っぽさを漂わせていた。
とてもクールだった。
朝比奈瑠璃が反応する間もなく、蒼井華和はレース会場に向かった。
「1番ライダー、庄周騎大魚選手をご紹介します。」
「2番ライダー、狼夜選手。」
「3番ライダー、火華の戯選手。」
「4番ライダー、玉響の瞳選手。」
「......」
「10番ライダー、幽霊選手。」
蒼井華和は司会者が彼女の名前を呼んだ時にちょうどコースに入った。
身長173センチ、長くまっすぐな脚線美を持ち、ヘルメットで顔は見えないものの、九頭身のスタイルで群を抜いていた。
司会者が競技ルールを説明し始めた。
観客席では賭けが始まった。
一人一選手のみ賭けることができる。
一口1000元からスタート。
勝てば5000元となる。
2倍の2000元なら、勝てば10000元。
3倍の3000元なら、勝てば15000元となる。
このように続き、上限はない。
観客席では大きな議論が交わされていた。
即座に好みのライダーを選ぶ人もいれば。
迷っている人もいた。
「内部情報があるんだ、3番を選べ。」
「3番?その内部情報は怪しいんじゃないか?3番はあんなに痩せてて、勝てそうにないぞ。」
「人は見かけによらないって言うだろう。」
痩せているからといって勝てないわけじゃない。
しかし、主催者側が仕込んだサクラではないかと疑う人もいた。
もし3番に爆発力がなければ、彼らの金は水の泡となる。
「やっぱり5番にしよう。」
全部で10人のライダー。
5番が一番体格がよかった。
身長189センチ、体重は300斤近く、威風堂々としたバイクも彼の前では小さく見えた。
「10番を選ぶ人はいないのか?」
この言葉に、周りから笑い声が起こった。
「10番が女だって分からないのか?」
レーサーは全員男性だ。
観客の5分の4も男性だ。
バイクとモーターバイクは違う。
モーターバイクはエンジンで動力を生み出し、電動バイクと変わらない乗り方で、男女問わず乗れる。