「簡単です。水を入れた容器と紫外線ペンを用意してください」
夢野空はアシスタントに準備を命じた。
すぐに、水と紫外線ペンがアシスタントによって運ばれてきた。
それらを見て、伴野智信は続けて言った。「医療用手袋も必要です」
夢野空はアシスタントを見つめ、アシスタントはすぐに意図を理解した。
全ての準備が整うと、伴野智信は上着を脱ぎ、上半身は半袖Tシャツだけになった。
スーツを横のアシスタントに渡し、手袋をはめ、紫外線ペンを手に取って続けた。「夢野空さん、鎮靜丸を水の中に入れていただけますか」
水の中に入れる。
鎮靜丸はたった一つしかなく、すぐには二つ目を作ることはできない……
もし、もし溶けてしまったら?
夢野空は一瞬躊躇した。
伴野智信は笑いながら言った。「夢野空さんもご存知でしょう。鎮靜丸の表面には薄いカプセル層があり、5分以内では絶対に水に溶けないはずですよね?」
夢野空は眉をわずかに寄せ、その後鎮靜丸を取り上げ、透明なガラス容器に入れた。
これらを終えると、夢野空は伴野智信の方を向いて、「他に何か必要なことはありますか?」と尋ねた。
「ご協力ありがとうございます。今のところは結構です」伴野智信は続けて言った。「カメラマン、こちらにカメラを向けてください」
カメラマンはすぐにカメラをこちらに向けた。
伴野智信は紫外線ライトを手に取った。
「では、夢野空さん、よくご覧ください」
言い終わると、伴野智信は紫外線ライトをつけ、鎮靜丸の入ったガラス容器に照射した。
紫外線は水面を透過し、鎮靜丸に当たった。
1秒。
2秒。
3秒……
1分近く経過したが、鎮靜丸は全く反応を示さなかった。
会場からは様々な声が上がった。
「やっぱり伴野智信は悪意があるんだ!」
「伴野岳志は一体どんな教育をしているんだ」
「文字は?文字が見えないんだけど?」
「夢野空さんに土下座して謝罪しろ!」
反応のない薬を見て、伴野智信も焦り始めた。
これはどういうことだ?
もし薬に文字が現れなければ、この薬が夢野空の作ったものではないことを、どうやって証明すればいいのか?
今どうすれば?
伴野智信の額には細かい汗が浮かび始めた。
夢野空は伴野智信を見て、「伴野若様、あとどのくらい時間が必要ですか?」
「もう少しお待ちください」