帝都サークルの大物以外に、秋川菊野は他の人物を思いつかなかった。
夏目岳陽はため息をつき、「その可能性もないわけではない。まずは荷物をまとめよう。できれば今夜のうちに出国したほうがいい。無理なら、母子二人で一時的に身を隠すしかない」
秋川菊野も事態の深刻さを悟り、頷いて、すぐに二階へ荷物をまとめに行った。
夏目家の資金は全て銀行にあった。
手持ちの現金は多くなかった。
しかし、装飾品なども含めれば、出国には何の問題もなかった。
母娘は荷物をまとめ、パスポートを持って、夜のうちに空港へ向かい、最も早いU国行きの便を購入した。
......
翌日、ニュースには夏目グループの破産宣告が報じられた。
創業者の夏目岳陽は粉ミルク汚染事件により、投獄された。
そして夏目光彦も証拠が揃った状態で逮捕され、裁判所での審理を待つことになった。