突然の声に、その場にいた全員が一瞬固まった。
皆が入り口の方を振り向いた。
入ってきた人物は三十歳前後で、金髪碧眼、舞台に向かって歩いていた。
それを見て、客席からざわめきが起こった。
「あの人は誰?何をするつもり?」
「なんだか悪意を感じるんだけど」
「……」
夢野空はまず客席の方を向き、静かにするよう促してから、来訪者の方を向いて、上品な微笑みを浮かべながら尋ねた。「お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
夢野空はいつもの高慢な態度を改めていた。
伴野智信は夢野空を見つめ、「俺様は名を変えず姓を改めず、伴野家の伴野智信だ」と言った。
伴野家。
伴野智信。
その名を聞いて、皆すぐに理解した。
名医白問は常々伴野家と親交があった。
白問と伴野智信の父である伴野岳志は忘年の交わりがあり、噂によると、伴野岳志は白問に智信を弟子にしてほしいと考えていたという。
薬王大会で夢野空こそが今日の主役のはずだった。
伴野智信は何をしに来たのか?
場を荒らしに?
白問のために抗議するため?
確かに、白問は鎮靜丸と美容丸で何期も続けて薬王大会の優勝を勝ち取っていた。
しかし今は。
白問の時代は過ぎ去った。
夢野空さんこそが新しい時代の幕開けなのだ。
伴野智信を見つめながら、夢野空は微笑んで言った。「伴野ご当主のお名前は以前からよく存じ上げております。また、伴野ご当主と白問先輩が親友であることも承知しております。白問先輩は常に私の憧れであり、漢方医学を学ぶ上での目標でもあります。伴野若様、どうか白問先輩によろしくお伝えください」
夢野空と白問は対立する立場にあった。
この時、夢野空が直接白問を自分の先輩と認めたことは、彼女の度量の広さを示していた。
普通の人にはこのような夢野空のような態度は取れないだろう。
この言葉が出るや否や、すでに静まっていた客席から、再びざわめきが起こった。
「ああ、私の推しは間違っていなかった!夢野空さんの人柄が本当に大好き!」
「夢野空さんは医術が優れているだけでなく、医の心も持っているわ!」
言い終わると、夢野空は続けて言った。「伴野若様、先ほど私に質問があるとおっしゃいましたが、どのようなご質問でしょうか?」