突然の声に、その場にいた全員が一瞬固まった。
皆が入り口の方を振り向いた。
入ってきた人物は三十歳前後で、金髪碧眼、舞台に向かって歩いていた。
それを見て、客席からざわめきが起こった。
「あの人は誰?何をするつもり?」
「なんだか悪意を感じるんだけど」
「……」
夢野空はまず客席の方を向き、静かにするよう促してから、来訪者の方を向いて、上品な微笑みを浮かべながら尋ねた。「お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
夢野空はいつもの高慢な態度を改めていた。
伴野智信は夢野空を見つめ、「俺様は名を変えず姓を改めず、伴野家の伴野智信だ」と言った。
伴野家。
伴野智信。
その名を聞いて、皆すぐに理解した。
名医白問は常々伴野家と親交があった。
白問と伴野智信の父である伴野岳志は忘年の交わりがあり、噂によると、伴野岳志は白問に智信を弟子にしてほしいと考えていたという。