如月廷真はエプロンを取って身につけ、料理を始めた。
彼は体に合わないピンクのキティちゃんエプロンを着ていて、そう見ると少し滑稽だった。
すぐに、キッチンから香ばしい匂いが漂ってきた。
如月廷真が作った肉みそラーメンはとても美味しく、具材も完璧に炒められていて、一口食べると口の中に香りが広がった。
蒼井華和は一口食べて、「この腕前は素晴らしいわ!私には真似できないわ」と言った。
如月廷真は薄い唇を開いて、「羨む必要はない」と言った。
彼がいれば十分だ。
食事が終わると、蒼井華和は電話を受けに行った。
如月廷真は立ち上がって皿を洗い、ついでにキッチンも片付けた。
蒼井華和が電話を終えた時には、如月廷真はすでに片付けを終えていた。
蒼井華和は「どうしてそんなに早いの!私が洗おうと思っていたのに」と言った。
「大丈夫、たった二つの皿だから」
如月廷真はエプロンを掛けて、続けて「じゃあ、先に帰るよ。何かあったら電話してくれ」と言った。
「うん」蒼井華和は彼をドアの外まで見送り、「そうだ、スーツケースを忘れてるわ」と言った。
如月廷真は微笑んで、「それは君へのプレゼントだよ。中身は帝都の特産品ばかりだ。友達にも分けてあげられる」と言った。
そう言われて、蒼井華和は思い出した。彼女は元々帰る前に特産品を買って帰ろうと思っていたが、出発前に忘れてしまっていた。
幸い如月廷真がいてくれた。
些細なことだけど、心が温かくなった。
「ありがとう」
如月廷真は手を伸ばして彼女の頭を撫で、目には愛情に満ちた表情を浮かべながら、「行くよ」と言った。
「気をつけて」
如月廷真が帰った後、蒼井華和は朝比奈瑠璃に電話をかけ、特産品を取りに来るように言った。
今日は日曜日で、朝比奈瑠璃はちょうど暇だったので、すぐに来た。
夜、二人は一緒に火鍋を食べに行った。
湯気の立ち込める火鍋越しに、朝比奈瑠璃は「華和、明日一緒に服を買いに行かない?私、随分買い物してないの」と言った。
「明日は無理かも、クラスメイトの誕生日で、行くって約束してるの」と蒼井華和は答えた。
明日は橘忻乃の誕生日で、彼女と結城詩瑶は早くから誕生日パーティーに参加すると約束していたので、約束を破るわけにはいかなかった。
「じゃあ来週は?」と朝比奈瑠璃は言った。