「まあ!本当ですか?」店員は非常に驚いた様子で言った。
「ええ」
「では、どんなスキンケア製品をお使いなんですか?」店員は続けて尋ねた。
「夏は使わないけど、冬は大宝を買うわ」
彼女はスキンケア製品にあまり詳しくなく、洗顔料さえほとんど使わなかった。
大宝を使う?
それを聞いた店員の心は砕けそうだった。彼女は4桁の値段のスキンケアセットを使っても蒼井華和のような肌になれないのに、蒼井華和は大宝を使っているなんて……
「お客様は本当に天性の美人ですね!羨ましいです!」
蒼井華和は軽く微笑んだ。
蒼井紫苑はそんな嘘を信じるわけがなかった。
大宝を使う?
ありえない!
スキンケア製品を使わない女性なんていない。
本当に偽善的だわ。
エステサロンの外で。
須藤悠翔は外に立ち、隣の林凛夜を見て、「ここで間違いないのか?」と尋ねた。
それを聞いて、林凛夜は手首の位置追跡装置を確認し、「安心してください、間違いありません」
何度も失敗したにもかかわらず、須藤悠翔は朝倉俊真が言及した大物を探すことを諦めなかった。
二日前、林凛夜はその大物が帝都に来ていることを突き止めた。
精密な位置特定の後、ついに大物の具体的な所在地を見つけ出した。
今度こそ。
必ずその人物を見つけ出してみせる!
大物が中にいることを確認し、須藤悠翔は中に入った。
林凛夜はすぐに彼の後に続いた。
二人が入るとすぐに、店員が近づいてきた。
「お二人様はエステをお受けになりますか?」
現代社会では、男性がエステを受けることは珍しくない。
中には女性以上に容姿を気にする男性もいる。
須藤悠翔は淡々と言った。「人を待っている」
「はい、こちらへどうぞ」店員は二人をホールへ案内した。「VIPのお客様は施術が終わるとここを通られます」
ホールには多くの人がいた。
ほとんどが男性を待つ女性たちだった。
須藤悠翔はビジネスエリートだけあって、男性たちの中で際立っていた。
時々、施術を終えた富裕層の女性たちが中から出てきた。
林凛夜は椅子に座り、足を組んで「時雨越兄、今度こそ大物が女性だと信じられましたよね!」
「エステは女性だけのものじゃない」須藤悠翔は言った。
林凛夜は笑いながら言った。「そう言えば、大物はかなり洗練された人なんですね」