蒼井紫苑にぴったりな言葉がある。
お姫様の運命を持っていないのに、お姫様病にかかっている。
蒼井大婆様も紫苑を本当の孫娘のように扱おうと考えたことがあった。
しかし、他人は結局のところ他人だ。
蒼井家の者がどれほど紫苑を可愛がり、実の娘のように接しても、紫苑は蒼井家の者に対して本心を見せることはなく、いつも嫌味な態度を取っていた。
次第に、蒼井大婆様は彼女への期待を失っていった。
榊原大婆様は笑いながら言った:「そんな言い方をしないで、紫苑は蒼井家の次女のお姫様じゃないの。」
「私の紅音でさえお姫様を名乗らないのに、彼女がどうしてお姫様なんですか?」蒼井大婆様は反問した。
その言葉はもっともだった。
道理から言えば、蒼井華和の方が蒼井家のお姫様という称号にふさわしい。
しかし短い付き合いの中で、榊原大婆様は華和に何の不適切な点も見出せなかった。
落ち着いていて、礼儀正しい。
田舎育ちの子供には全く見えない。
榊原大婆様は蒼井大婆様を見て笑いながら尋ねた:「そうそう、紅音は今後帝都に残るつもりなの?」
「ええ、彼女は私たち蒼井家の血を引く者だもの、帝都に残らずにどこに行くというの?」蒼井大婆様は頷きながら続けた:「でも冬休みが終わったら、河内市に戻って高校三年生を続けることになるわ。」
「帝都の学校に転校しないの?」榊原大婆様は興味深そうに尋ねた。
「高校三年生は一番重要な時期で、しかも彼女は一学期後に試験があるのよ。河内市には友達もいるし、突然帝都に転校したら、多かれ少なかれ馴染めない部分があるでしょう。」
榊原大婆様は理解を示して頷いた。「高校三年生の子供は確かに邪魔できないわね。紅音は河内市でどんな暮らしをしているの?養父母は彼女に優しくしているの?」
蒼井大婆様はため息をつきながら、「あの養父母も無責任な人たちね。この何年もの間、紅音はずっと田舎で暮らしていたわ。やっと迎えに行けたのに、まだ子供を一人暮らしさせているなんて。」
初めて河内市に華和を迎えに行った時の光景を思い出し、蒼井大婆様は胸が痛くなった。
まだ十八歳の女の子。
他の家庭なら、まだ両親に甘えている年頃なのに、華和はすでに自立して、一人で暮らしているなんて。