そして手首の翡翠のブレスレット。
このジュエリーセット......
蒼井紫苑は知っていた。
これは蒼井大婆様の持ち物で、蒼井家の家宝であり、その価値は数百億にも及ぶ。
しかし今、これらのものが蒼井華和の身に着けられている。
蒼井家の家宝が全て蒼井華和の身に着けられているなら、彼女がこれらを身につける意味は何があるのだろうか?
道理で言えば、蒼井大婆様には孫娘が二人いて、これらのものを孫娘たちに分けるなら、彼女と蒼井華和で半分ずつにするべきだった。
でも今は?
蒼井大婆様は全てのものを蒼井華和に与えてしまった。
えこひいき。
本当にひどいえこひいきだ!
あの老婆は本当に極端なえこひいきをしている。
蒼井華和の傍らに立つ蒼井大婆様は白髪こそ目立つものの、とても元気そうで、珍しく赤いチャイナドレスを着て、濃い色のショールを羽織り、真っ白な髪に赤い花を飾っていた。
蒼井華和と並んで立つ姿は非常に心温まる光景だった。
まさにあの言葉の通りだ。
白髪に花を飾るのを笑うなかれ、歳月は美人を敗れさせず。
蒼井陽翔も蒼井華和の身に着けているジュエリーに気付き、眉をひそめた。
彼は元々、蒼井大婆様がこれらのジュエリーを蒼井紫苑に贈るものと思っていた。
まず、これらは蒼井家の家宝である。
家宝である以上、当然身分の高い者に継承されるべきだ。
次に、蒼井紫苑は蒼井大婆様が幼い頃から手元で育てた孫娘であり、しかも、蒼井大婆様はここ数年蒼井紫苑を疎かにしてきた。これらのものを蒼井紫苑に贈り、彼女への償いとするのは当然のことだった。
しかし今。
蒼井大婆様は家宝を蒼井華和に贈ろうとしているのか?
蒼井華和の品性からして、もしこのジュエリーセットの本当の価値を知ったら、きちんと継承していけるのだろうか?
ぼけてしまったんだ!
蒼井大婆様は本当にぼけてしまった!
春日吉珠は蒼井華和を見つめ、しばらく呆然としていたが、やがてこう言った。「紅音は今日本当に綺麗ね!きっと会場で一番の存在感を放つわ。このジュエリーセットも紅音によく似合うわ。お母様、継承者を見つけられましたね!」
朝倉渚は笑顔で頷いた。
二人の義姉妹は、このジュエリーセットに手を出そうとは一度も思わなかった。なぜなら、蒼井大婆様が唯一の孫娘のために取っておくことを知っていたからだ。