145:華和は顔面打ちの達人_6

早乙女恵子は徐々に落ち着きを取り戻した。

嶽本登志は続けて言った。「これは全て蒼井さんのおかげだ。恵子、蒼井さんにしっかりとお礼を言わないとな。」

早乙女恵子は頷き、以前蒼井華和に騙されていると誤解していたことを思い出し、心に恥ずかしさを感じながら、同時に疑問も湧いてきた。「私はもう随分前から蒼井さんの薬を飲んでいなかったはずなのに、なぜ妊娠できたの?」

嶽本登志は笑いながら言った。「毎日食べている料理に漢方薬の香りがしていたことに気付かなかったのか?」

それを聞いて、早乙女恵子は目を丸くした。「まさか?」

嶽本登志は頷いて、「蒼井さんから完成した薬を貰って、粉にして、お前の料理に混ぜていたんだ。」

そういうことだったのか!

早乙女恵子は再び目を赤くし、嶽本登志を抱きしめた。「あなた、ありがとう!」

蒼井華和を信じ続けてくれた嶽本登志に感謝した。

「恵子、やっと苦労が報われたな。」

この子供は二人にとって、最高の新年の贈り物だった。

元々嶽本登志はこの年をどう過ごすか心配していた。

今はもう全く心配していない!

しばらくして、周防鳳雅が鶏スープを持って病室に入ってきた。「恵子、おめでとう。」

「鳳雅!」周防鳳雅を見て、早乙女恵子は非常に申し訳なく思い、周防鳳雅の手を握った。「鳳雅、ごめんなさい。前にあんなことを言うべきじゃなかった。」

以前周防鳳雅に言った言葉を思い出し、早乙女恵子は非常に後悔した。

「気にしないで、私は理解できるわ。」周防鳳雅は早乙女恵子の言葉を一度も気にしていなかった。

早乙女恵子は続けて言った。「帝都に行かなくて本当に良かった。もし行っていたら......」

その結果は想像したくもなかった。

嶽本登志は笑いながら言葉を継いだ。「帝都には行かなければならないよ。」

早乙女恵子は一瞬戸惑い、すぐには理解できなかった。

嶽本登志は続けて言った。「お正月が過ぎたら行こう。一つは蒼井さんにしっかりとお礼を言うため、もう一つは蒼井さんに年始のご挨拶をするためだ。」

早乙女恵子は頷き、嶽本登志の言葉に強く同意した。

すぐに。

お正月を迎えた。

大晦日。

非常に賑やかで、空気中にも祝祭の雰囲気が漂っていた。

昨夜帝都は大雪が降り、この都市を一夜にして白髪にし、また年の雰囲気も添えた。