真壁母は西園寺雅乃が大嫌いだった。
この世の中で、子供を産まない女性なんて、どれだけいるというの?
西園寺雅乃だけが高尚で、他人とは違うというわけ!
当初、真壁駿介が西園寺雅乃と結婚すると言い出した時、真壁母は反対した。結局のところ、真壁家には後継ぎが必要なのだから。
卵を産まない雌鶏を、飾りものとして迎え入れるつもり?
息子は大学院を卒業したのよ。どんな嫁でも迎えられるはずなのに、なぜ卵を産まない雌鶏を選ぶの?
でも西園寺雅乃はあまりにも裕福だった。
仕方なく、真壁母も同意するしかなかった。
「パパ!」
そのとき、小さな女の子が別荘から飛び出してきて、真壁駿介に抱きついた。「パパ、お帰り!」
小さな女の子はピンク色のダウンジャケットを着て、六、七歳くらいで、肌が白く、とても可愛らしかった。
これは真壁駿介の私生児だった。
桃子。
真壁駿介は娘を抱き上げ、頬にキスをして、「桃子、おばあちゃんに挨拶して」と言った。
「おばあちゃん」桃子は真壁母を見て、甘い笑顔を見せた。
真壁母は長男の孫のことしか頭になく、まるで桃子が見えないかのように、適当に頷いただけだった。
女の子なんて、損な存在!
長男の孫に比べられるはずがない!
真壁駿介は母親の性格を知っていたので、深く考えずに続けた。「桃子、こちらは伯母さんだよ。伯母さんに挨拶して」
桃子は真壁萌香を見て、「伯母さん」と呼んだ。
真壁萌香は笑いながら言った。「まあ!桃子ちゃん、こんなに大きくなって。前に会った時はまだ産まれたばかりだったのに、本当に小さかったわ!」
前回、真壁萌香も母親と一緒に来ていた。
その時、真壁母は朝日奈涼香が出産したと知り、とても喜んで、たくさんのお土産を持って帝都に駆けつけた。大きな男の孫を抱けると思っていたのに、結局は損な女の子だった。
本当に腹が立った!
真壁母は真壁駿介を見て、「私の長男の孫はどこ?」と尋ねた。
「二階です」と真壁駿介は答えた。
「連れて行って!」真壁母はすぐに言った。
真壁駿介は頷いた。
真壁母は歩きながら尋ねた。「駿介、今度は嘘じゃないわよね?また損な女の子じゃないでしょうね!」
また期待外れにされたくない。
真壁駿介は困ったような笑みを浮かべて、「安心してください、母さん。私が嘘をつくはずがありません」