「うん」真壁駿介は頷いた。
その言葉が落ちると、真壁母はまた尋ねた。「駿介、あの件はどうなった?」
「何の件?」真壁駿介は聞き返した。
真壁母は言った。「もちろん、光継を認知させる件よ!」
真壁母は教養こそないものの、真壁光継は西園寺雅乃の名義で養子にしなければ、正当に財産を相続できないことを知っていた。
それを聞いて、朝日奈涼香も真壁駿介を見つめた。
彼女も息子に他の女性を母親と呼ばせたくはなかったが、西園寺雅乃にすべてを惜しみなく息子に与えてもらうためには、心を鬼にして息子を西園寺雅乃に渡さなければならなかった。
真壁駿介は笑いながら言った。「安心して、その件は既に進めているよ。できるだけ早く彼女を説得して光継を養子にしてもらうようにする」
真壁母は大いに不機嫌になった。「何が養子よ、光継は元々私たち真壁家の血を引いているのよ!卵も産めないメスに何を恐れることがあるの!はっきり言ってやりなさい。本当に離婚する勇気があるのか見てやりましょう!」
離婚した女は中古品だ。まして西園寺雅乃は卵も産めない中古品だ。そんな女は、離婚したら、お金を積んでも誰も欲しがらないだろう。
「お母さんには分からないよ」真壁駿介は続けた。「僕は西園寺雅乃と婚前契約を結んでいて、今は会社が彼女一人の名義になっている。もし不倫が原因で離婚することになったら、その時は一銭も手に入らないんだ!」
西園寺雅乃と表面上の夫婦関係を何年も続けてきた真壁駿介の最終目的は、西園寺雅乃の金だった。
彼は当然、これまでの努力を水の泡にして、西園寺雅乃に何かを気付かれるようなことはしたくなかった。
「何で!」この話を聞いて、真壁母は激怒した。「彼女の金はあなたの金じゃないの?あなたがいなければ、彼女に今日があるの?」
西園寺雅乃という人間自体が真壁駿介のものなのだから、まして彼女の金はなおさらだ。
真壁駿介は母親を見つめた。「お母さん、僕の言うことだけ覚えていてください」
真壁母は頷いた。「分かった分かった」
息子の言うことは当然聞かなければならない!
朝日奈涼香は真壁駿介を見つめた。「じゃあ、西園寺雅乃はいつ養子縁組の手続きをするつもり?」
愛人として、朝日奈涼香は真壁駿介に四や五がいないか心配だった。