まさか女性側から持参金として三百五十万円を要求されるとは思いもよりませんでした。
二人はこの持参金の額を聞いて、すぐに婚約を破棄しようとしましたが、若松七宝がその娘に一目惚れしてしまい、両親に死をもって脅し、若松山根と橘秀実に血を売ってでも腎臓を売ってでもその三百五十万円を用意するよう迫ったのです。
仕方なく、二人は頷いて、何とかする方法を考えると約束しました。
方法を考えているところに、天から福が舞い降りてきました。
橘秀実は頷きながら、わざとらしい涙を流して泣きながら言いました。「はい、はい、あの子は私たちの五女です。警察官さん、実は私たちには五人の娘と一人の息子がいて、二人の娘は幼い頃に病気で亡くなり、もう一人は人さらいに連れ去られてしまったんです。私たち夫婦は生きている間に彼女に会えるなんて夢にも思っていませんでした...」
その過去の出来事については、橘秀実の姑以外にはほとんど誰も知りませんでした。結局、子供は生まれてすぐに殺されるか捨てられたのですから。
彼女は教養のない田舎の女性でしたが、決して愚かではありませんでした。
もし自分が子供を捨てたと言えば、その子が自分を認めるはずがありません。
そんなことは絶対にありえません!
だから、子供が人さらいに連れ去られたという嘘を作り上げる必要がありました。
もしかしたら、五女は裕福な家庭に引き取られ、そこから多額のお金を得られるかもしれません。
橘秀実は考えれば考えるほど興奮してきました。
若松山根も妻の意図をすぐに理解し、橘秀実を抱きしめて泣きました。
二人のその様子を見て、警察官はため息をつきました。真相は知らず、ただの苦労している中年の両親だと思ったのです。
「もういいですよ、おじさん、おばさん。あまり悲しまないでください。初期の照合では、その少女があなたがたの娘である確率は六十パーセントです。もし確実に確認したい場合は、病院で採血してDNA鑑定を行う必要があります。」
「はい、はい!」若松山根は素直な様子で頷きました。「警察官さん、私たち二人は何も分からない農民です。あなたの言う通りにします。娘が見つかりさえすればいいんです!」
警察官はこの夫婦も大変だったのだろうと思い、自ら二人を病院に連れて行き、採血して記録を残しました。