だから、この件は蒼井華和に知られてはいけない。
あれこれ考えた末、朝比奈瑠璃は橘忻乃と結城詩瑶のことを思い出した。
彼女の知る限り、橘忻乃と結城詩瑶は家庭環境が良好だった。
そこで、彼女は結城詩瑶に電話をかけた。
普段は二人ともWeChatで連絡を取り合っていたので、突然朝比奈瑠璃から電話がかかってきたことで、結城詩瑶は何か起きたことを悟った。
「司緒」
「詩瑶」これは朝比奈瑠璃が初めて人にお金を借りようとする時で、どう切り出せばいいか分からず、しばらく考えてから続けた。「お願いがあるんだけど」
「司緒、言って」結城詩瑶は親切な性格で、「私にできることなら、必ず手伝うわ」
朝比奈瑠璃は続けた。「私、今ちょっと困ってて、お金を借りられないかな、詩瑶?」
お金を借りる?
結城詩瑶もこんな経験は初めてだった。