163:彼の人を、彼が可愛がる_3

だから、この件は蒼井華和に知られてはいけない。

あれこれ考えた末、朝比奈瑠璃は橘忻乃と結城詩瑶のことを思い出した。

彼女の知る限り、橘忻乃と結城詩瑶は家庭環境が良好だった。

そこで、彼女は結城詩瑶に電話をかけた。

普段は二人ともWeChatで連絡を取り合っていたので、突然朝比奈瑠璃から電話がかかってきたことで、結城詩瑶は何か起きたことを悟った。

「司緒」

「詩瑶」これは朝比奈瑠璃が初めて人にお金を借りようとする時で、どう切り出せばいいか分からず、しばらく考えてから続けた。「お願いがあるんだけど」

「司緒、言って」結城詩瑶は親切な性格で、「私にできることなら、必ず手伝うわ」

朝比奈瑠璃は続けた。「私、今ちょっと困ってて、お金を借りられないかな、詩瑶?」

お金を借りる?

結城詩瑶もこんな経験は初めてだった。