頭が悪くてお金持ち。
騙されやすい。
彼らが朝比奈瑠璃のお金は要らない、朝比奈瑠璃に迷惑をかけたくないと言えば言うほど、朝比奈瑠璃は焦るばかり。
朝比奈瑠璃のような人には強く出てはいけない。
橘秀実が電話を切ると、若松山根は慌てた。「なんで電話切っちゃったんだよ!」
電話が切れてしまったら、朝比奈瑠璃は芝居を聞けなくなる。
しかし橘秀実は全く焦る様子もなく、笑いながら言った。「七宝のお父さん、私が三つ数えるうちに、あの子から電話がかかってくるって信じる?」
若松山根は明らかに信じていなかった。
橘秀実はカウントダウンを始めた。「じゃあ見てなさい。三、二……」
「一」と数えようとした瞬間、電話が鳴った。
しかし橘秀実は電話に出る気配がない。
橘秀実が全く電話に出ないのを見て、若松山根が受話器を取ろうとしたが、橘秀実に手を押さえられた。「そんなに急いで出ないで、もっと焦らしましょう」
若松山根は少し焦って「もし電話してこなくなったらどうするんだ?」
「大丈夫よ、そんなことにはならないわ」と橘秀実は言った。
若松山根は仕方なく橘秀実の言う通りにした。
電話は鳴り続けていた。
向こう側の朝比奈瑠璃は本当に焦っていた。
顔が真っ青になっていた。
三回目の電話でようやく橘秀実が電話に出た。「お嬢ちゃん」
「お母さん、一体何があったの?どうして電話に出てくれなかったの?」
橘秀実は気楽な様子を装って「何でもないのよ、何でもない。お嬢ちゃん、高校三年生が一番大事な時期だって聞いたわ。うちの家族からまだ大学生が出てないんだから、頑張って良い大学に入らないとね」
「はい、絶対に期待を裏切りません」朝比奈瑠璃の声は非常に断固としていた。「でもお母さん、一体何があったの?話してくれませんか?」
「大人の問題よ、子供は気にしなくていいの」
「でも私もこの家族の一員じゃないですか。この件について知る権利があります!」朝比奈瑠璃はこの家族のために何かしたかった。結局、両親は彼女に会うために長距離を移動し、家にある数少ない小遣いまで使ったのだ。娘として、彼女も力を尽くすべきだった。
「お母さんとお父さん、お金に困ってるんですか?」
この言葉を聞いて、橘秀実の顔に笑みが広がった。
目的達成!
やっぱり朝比奈瑠璃はバカだと分かっていた。