一方の如月家。
今日は如月家の者は誰も出かけていなかった。
もうすぐ11時半になるというのに、如月廷真はまだ人を連れて帰ってこない。早坂明慧は少し焦り、何度も腕時計を見ていた。
時間から計算すると、もう迎えに行った人と会えているはずなのに。
どうしてまだ何の動きもないのだろう?
矢野花音は笑いながら言った。「お母さん、焦らないで。来るべき時が来るものです。焦っても仕方ありませんよ」
二重の意味が込められていた。
来るべきものとは何か?
もちろん、婚約破棄だ!
蒼井華和がまだ現れないのは、きっと如月廷真と話をはっきりさせた後、帰ってしまったからに違いない。
篠崎月蓉は頷いて、「お姉さんの言う通りです」と言った。
「ママ、お腹すいた」そのとき、篠崎月蓉の6歳の息子、如月墨弦がテーブルの上の果物を取ろうとしたが、篠崎月蓉に手を払いのけられた。「空気の読めない子ね。この果物はあなたのために用意したものじゃないでしょう!お腹を壊すわよ!」
早坂明慧は眉をひそめた。次男の嫁のこの言葉が自分に向けられたものだと分かっていた。怒りを抑えながら、孫にマンゴスチンの皮をむいてやった。「墨弦、いい子にしていなさい。これからお三番目の叔母さんが来たら、みんなで食事ができるわ」
如月墨弦は早坂明慧が差し出したブドウを払いのけ、泣きながら階段を上がって行った。走りながら叫んだ。「おばあちゃんの偏り!うぅ...」
早坂明慧は篠崎月蓉を見て、「次男の嫁、これがあなたの子育ての仕方なの?」
篠崎月蓉は無邪気な顔で、「お母さん、天地に誓って、私は墨弦にそんなことを言ったことはありません!それに、子供の言うことですから、お孫さんと言い争うことはないでしょう?」
言い終わると、篠崎月蓉もソファから立ち上がった。「もう、今日は来ないでしょうね。午後は用事があるので、準備してきます」
矢野花音もこのとき口を開いた。「お母さん、言いにくいですが、もうこんな時間です。蒼井お嬢様はきっと来ないでしょう。特に用事がなければ、私も上がらせていただきます」
そのとき、外から足音が聞こえてきた。
早坂明慧はすぐに立ち上がった。「きっと廷真と華和が来たわ」
矢野花音は一瞬固まり、振り返った。
本当に来たの?