葉山雄大はそのまま真壁美々を見つめ、その目には見物人のような色が浮かんでいた。
そして自分がまもなく河内市の状元の先生になることを思うと、心の中は優越感でいっぱいだった。
大学時代、真壁美々は常に彼女の一歩先を行っていた。卒業後、真壁美々は有名高校の担任になったのに対し、彼女は普通の職業学校に配属されるしかなかった。
彼女と真壁美々は親友だったが、運命の天秤は常に真壁美々側に傾いていた。
でも良かった。
良かった、今は全てが変わったのだから。
良かった、タイミングよく国際学校に来て、蒼井真緒のような優秀な生徒に出会えた。そして、あの時蒼井華和を退学させることができて本当に良かった。
もしそうでなければ、蒼井華和は必ず足を引っ張る存在になっていただろう!
真壁美々は顔を上げ、続けて言った。「葉山雄大、安心して。私は決して空約束はしないわ。もし大学入試の結果が出て、あなたのクラスの蒼井真緒が状元になったら、去年一年分の給料を全部あなたにあげるわ。絶対に後悔しないわ。」
葉山雄大は頷いた。「いいわ。」
どうせ状元は逃げないのだから、25日の成績発表まで待てばいい。
その時になって、真壁美々がどんな言い訳をするのか見ものだわ!
葉山雄大はさらに付け加えた。「ボーナスも給料に含めてよね。」
高校教師の月給は七、八万円程度で、年末ボーナスを加えると、合計で約百二十万円になる。
これで名誉も金も手に入れられる!
葉山雄大は考えれば考えるほど興奮してきた。
「いいわ。」真壁美々は頷いた。
朝倉華真は二人の大学の同級生で、状況が真壁美々に不利だと見て、彼女の方を向いて小声で言った。「美々、やっぱり葉山雄大と賭けるのはやめた方がいいんじゃない?みんな同級生なんだから、冗談で済ませればいいじゃない!蒼井真緒は本当に河内市の状元になる可能性が高そうだよ。」
彼らは皆普通の教職員で、住宅ローンを抱え、上には年老いた親、下には子供がいる。一年分の給料は冗談では済まされない。
真壁美々は笑って言った。「私のことを心配してくれているのは分かるわ。でも人には契約精神が必要よ。葉山雄大と賭けを交わした以上、必ず守るわ。」
この言葉を葉山雄大が聞いて、「美々、そう言ってくれて安心したわ。あなたが約束を破るような人じゃないことは分かっていたわ!」