話を聞いて、若松教授は立ち上がった。「若松先生、私を呼びましたか。」
「はい。」若松先生は頷いた。
「何かご用でしょうか?」若松教授は若松先生の側に歩み寄った。
若松先生はパソコンの画面に表示された作文を指差して、「この作文に満点をつけたいのですが、ご確認いただけますか。」
「満点?」
その言葉を聞いて、若松教授は一瞬固まった。
試験院で10年間働いてきたが、このような事態は初めてではなかった。
しかし、前回満点の作文が出たのは3年前のことだった。
10年前、穂坂黎真という少年が「故郷」という作文で満点を取った。
通信手段がまだそれほど発達していなかった時代に、発表されるとすぐにネット上で話題となった。
今でもなお、この作文は人気が衰えていない。
多くの学生たちが参考にしている。
「見せてください。」
若松先生は自分の席を譲って、「どうぞお座りください。」
若松教授はパソコンの前に座り、マウスをスクロールしながら真剣に作文を読んだ。
3年前の作文ほど印象的ではないだろうと思っていた。
穂坂黎真は神格化された存在だった。10年後に、彼以上の実力者が現れるとは思えなかった。
しかし、内容に驚愕した。
この文章は感情が真摯で、文才に溢れ、世界で最も美しい言葉で表現したくなるような作品だった。
作者は古今を織り交ぜながら「生きる」ことを語っていた。
わずか500字の中に、多くの名言や名著が引用され、作者の幅広い知識に感嘆させられた。
作文を読み終えた若松教授は非常に興奮していた。受験生の名前が見えないのが残念だった。今すぐにでもその生徒と議論してみたかった。
十代の子供がこのような文章を書けるとは、誰が想像できただろうか?
しかし、若松教授はすぐに冷静さを取り戻し、「剽窃チェックはしましたか?」と尋ねた。
満点をつけるためには、この作文が盗作でないことを確認する必要があった。
大学入試は完全に公平公正でなければならない。
もしこの文章が受験生の書いたものであれば、協議の上で適切な点数をつけることになるだろう。
若松先生は首を振って、「まだです。」
「念入りにチェックしてから、他の教授たちとも相談しましょう。」
「はい。」
若松先生は剽窃チェックソフトを開き、作文を入力した。
引用された名言以外の。