話を聞いて、若松教授は立ち上がった。「若松先生、私を呼びましたか。」
「はい。」若松先生は頷いた。
「何かご用でしょうか?」若松教授は若松先生の側に歩み寄った。
若松先生はパソコンの画面に表示された作文を指差して、「この作文に満点をつけたいのですが、ご確認いただけますか。」
「満点?」
その言葉を聞いて、若松教授は一瞬固まった。
試験院で10年間働いてきたが、このような事態は初めてではなかった。
しかし、前回満点の作文が出たのは3年前のことだった。
10年前、穂坂黎真という少年が「故郷」という作文で満点を取った。
通信手段がまだそれほど発達していなかった時代に、発表されるとすぐにネット上で話題となった。
今でもなお、この作文は人気が衰えていない。
多くの学生たちが参考にしている。