171:今まで負けたことがないのに、子供に負けた!_5

蒼井真緒は腹に一杯の怒りを抱えていた。

今日は榊原社長に会いに来たのだ。

静園さんがこちらにオフィスビルを持っていると聞いて、運試しに来てみたが、静園さんには会えず、あのクズに会ってしまった。

まったく縁起が悪い。

「真緒」

そのとき、榊原社長の声が空気の中に響いた。

「社長」と聞いて、蒼井真緒はすぐに作り笑いを浮かべ、榊原社長の側に寄って腕を組んだ。

榊原社長は今年六十歳。

顔は油ぎって、ビール腹を突き出している。

彼を見るたびに、蒼井真緒は吐き気を催した。特に自分の初めてを彼に捧げたことを思い出すと、吐き気を抑えることができなかった。

でも今の彼女には他に選択肢がなかった。

蒼井龍は蒼井グループを再建するための資金が必要だった。

榊原社長以外に、頼れる人はいなかった。