173:朝比奈瑠璃の絶望、華和が動く!_4

このブラックカードは彼女にとって見慣れないものではなかった。

それはブルースター銀行のブラックカードだった。

ブルースター銀行は世界十大銀行の一つで、ブラックカードの発行には一つの基準しかなかった。

それは、カード内に三千億の資金を保有していることだった。

つまり。

篠崎澪が蒼井華和に渡したのは単なるカードではなく、巨額の資金だった。

一般人が一生かかっても手の届かない巨額の資金。

自分の月々のたった百万円の小遣いを思うと、蒼井紫苑の口元には嘲笑の弧が浮かんだ。

普段、彼女が気に入った限定バッグは八、九千万円もする。

百万円の小遣いなんて足りるはずがない!

でも小遣いが足りないと言い出すたびに、蒼井修誠は質素倹約の話を持ち出すのだった。

倹約しなければならないと。

他人と比べてはいけないと。