175:大丈夫、迎えに来たから_5

蒼井華和が手を出そうとした時。

一本の手が彼女の耳元を越えて、黒川振一を直接引っ張り上げた。

彼女は少し振り返った。

男の横顔が見えた。

そして低い声が聞こえた。

「早く上がれ、ここは俺に任せろ」

蒼井華和は考える暇もなく、急いで階段を上がった。

階段口に着いたとき、空気の中に朝比奈瑠璃のドアを叩く音が響いた。「華和、私はここよ!ここにいるわ!」

この数日間、朝比奈瑠璃は上階に閉じ込められていた。

一度も下に降りることはなかった。

蒼井華和は足を速め、三階に着いたが、そこには防犯ドアが設置されており、複数の鍵がかけられていた。

「司緒、慌てないで。すぐに連れて帰るから」

「華和!」

蒼井華和の名前以外、朝比奈瑠璃は何も言えなかった。

涙が顔一面に流れていた。

鍵がないとドアは開けられない。蒼井華和は眉をひそめ、髪から黒いヘアピンを一本取り出した。

ヘアピンを錠前に差し込んだ。

そっと動かすと。

カチッ。

最初の鍵が開いた。

次に二つ目の鍵、三つ目の鍵。

それぞれの鍵を開けるのに、一分とかからなかった。

もし誰かがその場にいたら、きっと目を丸くして驚いただろう。

恐ろしいほどの手際の良さだった!

三つの鍵を開けた後は、防犯ドアについている元々の鍵。

黒川家の者は朝比奈瑠璃が逃げ出さないように。

実に手の込んだことをしていた。

最後の鍵も、蒼井華和は同じようにヘアピンで開けた。

この間。

朝比奈瑠璃はとても緊張していた。

彼女は怖かった。黒川振一が突然来るのではないかと。

「華和、早く」

「華和!」

「パン!」

その時、鍵が開いた。

ドアが開いた。

強い光が彼女の背後から差し込み、暗闇を貫いて、闇に包まれていた朝比奈瑠璃を照らした。

その瞬間。

朝比奈瑠璃は少し呆然とした。

彼女はそのまま蒼井華和を見つめ、ついに我慢できずに声を上げて泣き出した。まるで虐待された子供が、ようやく大人に会えたかのように。

「華和!」

「華和、やっと来てくれたの!」

朝比奈瑠璃は矢のように飛び出し、蒼井華和を抱きしめた。まるで次の瞬間に消えてしまうのを恐れているかのように。

「怖がらないで、家に連れて帰りに来たの」

「連れて帰って!華和、連れて帰って!」

もう一刻もここにいたくなかった!