五十万円も払って嫁に迎えた嫁を、このまま奪われるわけにはいかない。
朝比奈瑠璃は黒川家の人間だ。死んでも黒川家の幽霊だ!
「では今から言いますが、若松五美は朝比奈瑠璃です」蒼井華和は続けて言った。「第一に、あなたの息子と彼女は正式な婚姻届を出していないので、夫婦関係とは認められません。第二に、あなたたちが今朝比奈瑠璃を監禁していることは、すでに不法監禁罪に該当します。第三に、あなたたちが薬で朝比奈瑠璃を昏睡させ、強制的に黒川振一との結婚式を挙げさせたことは、人身売買罪に該当します」
ここまで言って、彼女は如月廷真の方を向いて、「如月兄さん、これらの罪状を合わせると、何年の懲役になりますか?」
「最低でも十年、最高なら無期懲役だ」
男は低い声で、しかし力強く言い切った。
これを聞いた周防翠子は、まったく気にする様子もなく、「ふん!誰を脅かしているつもり?」
村ではこういうことは珍しくないのだ!
誰が娘を嫁がせるのに結納金をもらわないというの?
それに、朝比奈瑠璃は今や黒川家の人間だ。朝比奈瑠璃を監禁するどころか、殺したとしても、これは家の中の出来事で、ただの家庭内の問題だ。
法律が関与できるはずがない。
そのとき、二階にいた黒川振一も下の階の声を聞きつけ、急いで階下に降りてきた。
「母さん、どうしたんだ?」
周防翠子は言った。「強平、あの人たちがお前の嫁を奪おうとしているのよ!」
これを聞いた黒川振一は怒りに震え、拳を振り上げて喧嘩を仕掛けようとした。
しかし、その拳が振り下ろされる前に、彼は体格のいいボディガードに関節技で制圧された。
この状況を見た周防翠子は、すぐに地面に座り込み、その本領を発揮して泣き叫び始めた。「助けて!誰か来て!人殺しだ!人殺しだ!」
「誰か来て!」
そのとき、黒川幸太が大勢の村人を連れてきた。
その村人たちの中には、土方鉄平もいた。
一晩見かけなかった若松美智子を見つけると、土方鉄平はすぐに近寄り、若松美智子の手をしっかりと掴んだ。「この淫売め!昨夜は男のところに行ってたんだろう!早く家に帰るぞ!帰ったら殺してやる!」
まず携帯電話が見つからず、次に若松美智子が姿を消し、土方鉄平は一晩中人を探し回り、一睡もしていなかった。
今の土方鉄平は、若松美智子を殴り殺したい気分だった。