175:大丈夫、迎えに来たから_3

信じないどころか、朝比奈瑠璃は彼女を精神病患者として扱った。

しかし、若松美智子は怒らなかった。

彼女には分かっていた。朝比奈瑠璃のすべての行動は、父母の愛を切望し、家族を持ちたいという強い願望からきているのだと。

蒼井華和は眉をひそめた。

そのとき、若松美智子が続けて言った。「蒼井さん、少しスピードを落としてください。この先が黒川家です。」

「分かりました。」蒼井華和は目を上げ、「あの白い洋館ですか?」

「はい。」若松美智子は頷いた。「あれです。」

蒼井華和は速度を落とし、門の前に車を停めた。

後続の車も続いて入ってきて停車した。

まだ時間は早かった。

黒川家の者たちはまだ起きていなかった。

つい最近結婚式を挙げたばかりで、窓や扉には真っ赤な「囍」の文字が貼られていた。

蒼井華和は目を上げ、その瞳には冷たい光が宿っていた。

若松美智子は車のドアを開けて降り、「蒼井さん、先に行って開けてもらってきます。」

「ええ。」蒼井華和は軽く頷いた。

シートベルトを外して一緒に降りた。

若松美智子の服は乾いていたが、まだ泥が付いていた。彼女は車を降り、何事もなかったかのように装って、ドアを叩き始めた。「おばさん!おばさん、開けてください!」

しばらくして、家の中から周防翠子の声が聞こえた。「誰よ!こんな早くに!」

頭がおかしいんじゃないの!

若松美智子は笑みを浮かべて、「おばさん、美智子です。」

来訪者が若松美智子だと分かると、周防翠子は渋々起き上がってドアを開けに行った。

今や朝比奈瑠璃は彼女の義理の娘で、若松美智子は息子の義理の姉だった。

周防翠子が来てドアを開け、あくびをしながら言った。「美智子、こんな早くに何の用?」

そのとき、周防翠子はようやく門前に停まっている車と、立ち並ぶ黒服の男たちに気付いた。

周防翠子は一瞬固まった。

田舎の主婦である彼女は、こんな光景を見たことがなかった!

幻覚を見ているのかと思った。

しかし、目をこすって再び見ても、目の前の光景は何も変わっていなかった。

「美智子、これは...あなた...」周防翠子は怖くて言葉を詰まらせた。