175:大丈夫、迎えに来たから_2

若松美智子の心の中は、何とも言えない気持ちだった。

ただ泣きたかった。

息が詰まりそうだった。

蒼井華和が自分を嫌うのではないかと心配していたが、実際は自分の考えが狭すぎただけだった。

本当に高貴な人は、身分の上下など眼中にないのだ。

雨のせいで、車のスピードは遅かった。

12キロの道のりは、昼間なら最大でも30分だ。

しかし夜は視界が悪く、山道で滑るのを心配して、1時間近くかかってようやく村の入り口に着いた。

3台の車が同時に進入した。

村に入るとすぐ、犬の鳴き声が響いた。

「ワンワンワン……」

あちこちから鳴き声が聞こえた。

若松美智子は道を見続けながら、「運転手さん、村に入ってからは道が悪いので、もう少しゆっくり走ってください」と言った。

奥山村は山の麓に位置している。

使える土地が少なく、村の人口が非常に密集しているため、道は広くは作られていない。

少し注意を怠ると、タイヤが縁石の下に滑り落ちてしまう。

運転手はこのような道を運転したことがなく、夜は視界も悪いため、車が転覆しないよう極めてゆっくりと運転した。

「お姉さん、ここはどんな場所なんですか!道があまりにも走りにくいです。」

若松美智子は「この道はまだましな方です。この先には崖沿いの道があります」と答えた。

「崖沿いの道?」

この言葉を聞いた運転手は、顔が真っ青になった。

「はい」若松美智子は頷いた。

「いや、だめです。私、高所恐怖症なんです」運転手はブレーキを踏み、如月廷真の方を振り向いて「先生、私たち、夜明けまで待てませんか?」と言った。

もう運転を続けられなかった。

考えただけでも怖かった。

如月廷真が眉をひそめ、何か言おうとした時、蒼井華和が「私が運転します」と言った。

運転手は蒼井華和を見て「蒼井さん?」と言った。

蒼井華和はまだ若いのに。

運転できるのだろうか?

蒼井華和が運転すると言うのを聞いて、運転手は渋々「じゃあ、やっぱり私が運転します」と言った。

やはり彼はベテラン運転手なので、若い女性より安全だろう。

「大丈夫です、私にできます」

蒼井華和は車のドアを開け、運転席に向かった。

運転手は仕方なく降りて、後部座席に移動した。