193:抑えきれない好意!_3

個室のドアを開けると、長い廊下が続いており、その廊下を進むと、屋上庭園に出る。

庭園は広々としている。

初夏の季節で、そよ風が心地よく、庭園には色とりどりの花が満開に咲いていた。

蒼井陽翔が屋上庭園に足を踏み入れた瞬間、すらりとした女性の姿が目に入った。

手すりに寄りかかる女性の姿は、その美しい腰のラインを一層際立たせ、手に持った煙草の煙が、その絶世の美貌を幻想的に包み込んでいた。

それは。

柚木昭乃だった。

蒼井陽翔の心臓が早鐘を打ち始めた。

ドキドキと。

自分の顔に触れ、今日マスクをしていることに感謝した。

そうでなければ、顔の傷跡をどう説明すればいいのか。

「昭...」

彼が口を開いた途端、柚木昭乃が振り返り、笑いながら言った。「あら、蒼井トップスター!なんて偶然でしょう!」

「ええ、本当に偶然ですね。」

柚木昭乃を前にして、蒼井陽翔は彼女の目を見ることさえできなかった。

柚木昭乃が一歩一歩近づいてきて、「蒼井トップスター、何か後ろめたいことでもあるの?」

「い、いいえ。」

「なら、どうして私の目を見られないの?」柚木昭乃は笑いながら尋ねた。

蒼井陽翔は顔を上げて柚木昭乃を見たが、彼女の目と合った瞬間、反射的に下を向いてしまった。

柚木昭乃は軽く笑った。

「私のメイクが濃すぎるのかしら?」柚木昭乃は続けた。「以前、あなたのインタビューを見たわ。蒼井トップスター、濃いメイクの女性は苦手なんでしょう?」

それは柚木昭乃と出会う前のインタビューだった。

その言葉を聞いて、蒼井陽翔はすぐに説明した。「昭乃さん、誤解です。私は決して濃いメイクの女性が苦手なわけではありません!」

「じゃあ」柚木昭乃は煙を吐き出しながら、蒼井陽翔をじっと見つめた。「蒼井トップスターは私のことが好きだと解釈していいのかしら?」

その言葉に、蒼井陽翔の顔は一瞬にして真っ赤になった。

柚木昭乃にどう返事をしようか考えていた時。

「あはは...」

柚木昭乃は笑い出した。「蒼井トップスター、緊張しないで。冗談よ。」

そう言って、柚木昭乃は腕時計を確認した。「約束の人がいるので、これで失礼します。」

言い終わると、柚木昭乃は背を向けて立ち去った。

柚木昭乃の後ろ姿を見つめながら、蒼井陽翔の心は複雑な思いで一杯だった。