「大丈夫よ」朝比奈瑠璃は言った。「今は夏だし」
ずっと家に引きこもっていたら、かえって疑われてしまうだろう。
それを聞いて、若松美織は何も言わなかった。
彼女は子育ての経験がないので、そういったことについてはよく分からず、朝比奈瑠璃にアドバイスをするしかなかった。
明日は遊びに行くので、朝比奈瑠璃は準備をしなければならない。まず髪を洗い、それからクローゼットを開けた。
クローゼットには服があまりなかった。
ショッピングモールで何着か選ばなければ。
もしかしたら......
もしかしたら明日、白川さんもいるかもしれない。
好きな人の前でみすぼらしい姿を見せたくない。
朝比奈瑠璃はタクシーでショッピングモールに行き、一気に3、4着の服を買い、それから姉たちと甥っ子、姪っ子にも一着ずつ買った。
服を買った後、朝比奈瑠璃はスキンケア用品と化粧品も買った。
家に帰ると。
二人の子供たちはとても喜んで、飛び跳ねていた。
「ありがとう、おばちゃん!」
「新しい服が手に入ったよ!」
以前は、お正月にしか新しい服を着る機会がなかった。
若松美智子は朝比奈瑠璃を見て、「司緒、私は服を持っているし、子供たちにもあるから、自分の分だけ買えばよかったのに。私は二人の子供の母親だから、新しい服なんて必要ないわ。お金は大切に使わないと。あなただって稼ぐのは大変でしょう」
朝比奈瑠璃はまだ学生なのに、姉として妹に服を買ってもらうことに若松美智子は申し訳なく感じていた。
それに、彼女は二人の子供の母親だから、いい服を着ても無駄遣いだと思っていた。
山奥から出てきたとはいえ、若松美智子は今は二人の子供をまともに育てることだけを考えていて、他のことは考えたこともなかった。
「お姉さん、まだ30歳よ」朝比奈瑠璃は真剣に言った。「華和さんが言ったように、人生はまだまだ長いわ。子供の母親だからって新しい服が着られないなんてことはないでしょう?新しい服を着て、きれいにおしゃれをしましょう。帝都では、多くの知識人が30歳になっても恋愛経験がないのよ」
若松美織は笑いながら頷いた。「司緒の言う通りよ、お姉さん。私たちは笑顔で生活に向き合って、きれいに生きていかなきゃ」
若松美智子は新しい服を手に取り、感慨深げだった。