188:顔面打撃、酔っ払いの華和(その1)_5

蒼井華和は野良犬を抱きながら、つぶやいた。「詩瑶、どうして急に黒くなったの?」

結城詩瑶は困り果てた様子で、「華和兄、私が詩瑶よ」

「あなたはウサギさんだって言ったでしょ!」蒼井華和は怖い顔をして、小さな八重歯を見せながら、「もう一度詩瑶だって言ったら、すっごく怒るからね!ふん!」

結城詩瑶:「......」

橘忻乃は涙が出るほど笑った。

蒼井華和は突然橘忻乃に気付き、彼女を指さして言った。「このウサギさん、知ってる!あなた少し...似てる...似てる...橘忻乃に似てる!」

「蒼井美人、よく見て、私が橘忻乃よ!」

「あなたはウサギさんよ」蒼井華和は片手で犬を抱え、もう片方の手を橘忻乃の肩に置いて続けた。「ウサギさん、お名前は?ねえ、橘忻乃ってすっごくお金持ちなのよ。家にはおいしいタピオカミルクティーもあるの。でも、私たちウサギはタピオカミルクティーは飲まないから、彼女のお金を盗んであなたにキャロットジュースを買ってあげるわ!」

橘忻乃:「......」

蒼井美人はひどいわ、酔っ払ってまで私のお金のことを考えてる。

「どんな味のキャロットジュースが好き?」

蒼井華和は自問自答した。「私はタピオカミルクティー味のキャロットジュースが一番好き」

そのとき、一台の高級車が彼女たちの前に停まった。

車から長身の人影が現れた。如月廷真を見るのは初めてではないが、毎回見るたびに息を呑むほどだった。

もちろん、目の前のこの男性が河内市で有名な落ちこぼれでなければ、もっと良かったのだが。

「華和?」

如月廷真は犬を抱いている蒼井華和を見て、困惑した様子だった。

橘忻乃と結城詩瑶は如月廷真が蒼井華和に相応しくないと思っていたが、彼は蒼井華和が認めた婚約者なので、二人は礼儀正しく挨拶をした。「如月さん、今日はクラス会があって、華和が少し飲みすぎてしまったみたいです」

如月廷真は眉をひそめた。「じゃあ、送っていきましょう」

「あなた、私のあの役立たずの婚約者に似てるわね」蒼井華和は相変わらず片手で犬を抱えながら、如月廷真の前に立ち、じっくりと観察した。「うーん...でも、腹筋あるの?腹筋がないと私の婚約者にはなれないわ」

そう言いながら、蒼井華和は如月廷真のシャツの裾を捲ろうとした。

如月廷真は彼女の手を押さえ、低い声で言った。「ある」