その言葉を聞いた瞬間、朝比奈瑠璃の顔から血の気が引いた。
蒼井紫苑!
蒼井紫苑はどうやって彼女の妊娠中絶のことを知ったのか?
このことは彼女と蒼井華和、そして二人の姉しか知らないはずなのに。
その瞬間。
朝比奈瑠璃の全身から力が抜けていくようだった。
ほとんど立っていられないほどに。
このことを永遠に誰にも知られずに済むと思っていたのに、残念ながら……
今どうすればいいの?
朝比奈瑠璃は道端の手すりを掴んだ。力を入れすぎて、指の関節が白くなっていた。
「そうよ」蒼井紫苑は朝比奈瑠璃をじっと見つめ、目には得意げな色が浮かんでいた。「あなたの推測は正しいわ。私にすべてを話したのは蒼井華和よ。あなたが親友だと思い込んでいた、あの親しい姉妹がね」
蒼井紫苑の声は優しかったが、その言葉は刃物のように朝比奈瑠璃の体を一刀一刀切り刻んでいった。