蒼井華和のネット人気がこんなに高いなんて思わなかった。
【配信者すごいな!お姫様の進学祝いに参加できるなんて。】
【壇上にいるのがお姫様?】
【学問の雰囲気が漂っている!】
【お姫様に拍手。】
【うわ、この問題誰がお姫様に出したの?こんなに難しいなんて!】
【十大積分難問の一つじゃない?】
【今夜のお姫様も綺麗だね。】
そのとき、空気の中にパチパチとキーボードを叩く音が響いた。
少女は片手にノートパソコンを持ち、もう片方の手でキーボードを打ち続けていた。
その速さといったら。
残像しか見えないほどだった。
「彼女の解き方、ネットのと違うみたいだけど。」
「そもそも間違ってるんだから、同じわけないでしょ?」
「まあでも、タイピング速いよね。」
「適当に打ってるだけでしょ、速くたって意味ないじゃん!自己満足!」
「......」
藤原嵐子は背景のスクリーンを見つめながら、目を細めた。
彼女にはわかっていた。
蒼井華和が演技していることを。
蒼井華和は下からの議論の声など聞こえないかのように、素早くキーボードを叩き続けた。
キーボードを見ることもなく、それでも正確に一文字一文字を打っていく。
パソコンの画面の光が彼女の顔に反射していた。
玉のように白い顔に冷たい光が映っているかのようだった。
【あ......お姫様、これ違うんじゃ......】
【下の人たちうるさすぎ!】
【この問題難しすぎるよ!お姫様まだ高校卒業したばかりなのに。】
【でも前の人が言ってたけど、蒼井華和が自分からこの問題を解くって言ったんだって。自分がどれだけすごいか証明したかったんでしょ!でも逆効果になっちゃったね。】
【自分の家で恥をかくだけだったのに、余計なお節介な親戚が配信までしちゃって!】
【......】
みんな蒼井華和がどう収めるのか見守っていた。
この問題を正しく解けない限り。
彼女は壇上から降りることができない。
藤原嵐子は蒼井華和から目を離した。
もう見る必要がなかったから。
藤原嵐子が背を向けた瞬間。
蒼井華和の手が一瞬止まった。
キーボードを叩く音が途絶えた。
藤原嵐子は口元をゆがめた。
考えるまでもなく、蒼井華和はもう続けられないに違いない。
しかし次の瞬間。