「かわいそうな子ね。でも私の紅音に出会えて運がいいわ」と言って、篠崎澪は蒼井華和を見た。「紅音、この子の名前はモチ子なの?」
「うん」
篠崎澪は言った。「モチ子とまんたん、いいわね、いいわね」
モチ子は理解したかのように、篠崎澪の手のひらに頭をすりつけた。
篠崎澪は笑って言った。「わぁ、賢いわね!」
蒼井紫苑は傍らに立っていた。
その表情は、見るに堪えないほど醜かった。
数人で庭園を散歩していた。
蒼井紫苑は常に数人の後ろをついて歩いていたが、まるで部外者のような気分だった。
蒼井華和!
これは全て蒼井華和のせいだ!
蒼井華和がいなければ、こんな目に遭うはずがなかった。
蒼井紫苑は唇を噛んだ。
花壇越しに、高城ママは蒼井紫苑の後ろ姿を見つめ、目には深い同情の色が浮かんでいた。