二人の間に。
蒼井華和は班長の方を向いて、「申し訳ありません、班長。少し遅れてしまったみたいです」
約束の時間は三時
今は二時五十一分。
橘承志の顔が赤くなり、「遅刻じゃない、僕たちが早く来すぎただけだよ」
六組の男子生徒のほとんどが、蒼井華和に密かな恋心を抱いていた。
かつて誰かが彼女をこんな言葉で表現した
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彼女は北橋高校の男子生徒たちの青春そのものだと。
若松瑠々の表情が曇った。
蒼井華和は同窓会に来ないと思っていたのに。
まさか......
蒼井華和は橘忻乃と結城詩瑶の間に座った。
結城詩瑶は声を潜めて蒼井華和と話をした。
橘忻乃は若松瑠々を見て、「あなたの負けよ」
「レモン食べなさい」
そう言って、橘忻乃はレモンを若松瑠々の前に差し出した。「このレモンがあなたにぴったりね、同じように酸っぱいもの同士~」
彼女は意図的に語尾を引き延ばし、周りの人たちは低く笑い声を漏らした。
若松瑠々はレモンを受け取り、「食べればいいでしょ!」
皮も剥かずに、そのまま一口かじった。
その瞬間。
口の中に酸っぱさが広がり、よだれが出て、顔中がしわくちゃになった。
この味は全然心地よくない。
特に酸味が歯に染み渡る感覚。
まるで歯がレモンの酸っぱさで抜け落ちそうな感じだった。
それなのに、橘忻乃は若松瑠々をそのまま放っておくつもりはなく、笑いながら言った:「このレモンを全部食べられない人は、犬になるわよ」
若松瑠々は酸っぱさで涙が出てきたが、それでも必死に一個のレモンを全部食べきった。
一個のレモンを食べ終わると、若松瑠々は大きく水を飲んだ。
でも全然効果がない。
口の中は酸味以外、他の味がほとんど感じられなかった。
橘忻乃はようやく満足げに席に戻り、冷ややかに鼻を鳴らした。「ざまあみろ」
若松瑠々は指をぎゅっと握りしめた。
橘承志は続けて言った:「六組の皆が揃ったところで、料理を注文しましょうか」
最初に運ばれてきたのはお酒だった。
「今日は飲まずには帰れないぞ!」
この半人前の子供たちは、半年前まで親に監視され、スマートフォンを使う時間さえなかったのに、まして飲酒なんてもってのほかだった。
やっと高校を卒業できたのだから、もちろん羽を伸ばしたい。