198:榊原詩々の身世の謎(11更)_2

若松冬音も馬鹿ではなく、蒼井紫苑を見上げて言った。「どうやって手伝うの?」

「私の言う通りにすればいいの」蒼井紫苑は続けて言った。「冬音姉、私たち長年の付き合いでしょう。私の人柄はよく分かっているはずよ。あなたが本当に二番目の兄を好きなのは分かっているわ。妹として、誰よりも兄さんの幸せを願っているの。そうでなければ、手伝うなんて言い出さないわ」

蒼井紫苑は良き妹を演じていた。

蒼井紫苑は頷いた。「もちろんよ」

彼女は蒼井家で同盟者を必要としていた。

元々、蒼井紫苑は蒼井琥翔に手を出すつもりだった。

しかし、よく考えてみると、少し危険すぎると感じた。

蒼井琥翔という人物は。

まだ若いとはいえ。

外の世界で彼の名前が出るたびに、四文字で形容される。

老獪狡猾。

しかし蒼井遥真は違った。

蒼井遥真は芸術家で、彼の目に映る人間性はそれほど複雑ではなかった。

人に対してそれほど警戒心も持っていなかった。

とても楽しかったので。

だから、蒼井遥真は夜にかなりの量のお酒を飲んでいた。

しかし、まだ酔っ払うほどではなかった。

そのとき、若松冬音がグラスを持って蒼井遥真の側に来た。

「遥真」

若松冬音を見て、蒼井遥真は気づかれないように眉をひそめた。

「冬音、言うべきことは全て言ったはずだ」蒼井遥真は若松冬音を見つめ、目には諦めの色が浮かんでいた。「僕には好きな人がいる」

若松冬音の態度は普段とは違っていた。口元に苦笑を浮かべて、「分かってる。遥真、私があなたに相応しくないのは分かってる。だから、私は手放すことにしたの。私自身も、あなたも自由にするために」

これを聞いて、蒼井遥真は驚いて若松冬音を見つめた。

なぜか、今日の若松冬音は少し様子がおかしいと感じた。

若松冬音は蒼井遥真に反応する機会を与えず、テーブルの上のグラスを取り、蒼井遥真に差し出した。「このお酒を飲んでくれたら、もう二度とあなたにつきまとわない」

「本当か?」蒼井遥真は眉をひそめた。

「うん」若松冬音は頷いた。

蒼井遥真は少し躊躇した後、若松冬音が差し出したグラスを受け取った。

彼は気づかなかったが、若松冬音は二つのグラスを入れ替えていた。

つまり。

蒼井遥真は若松冬音のグラスを飲んでいたのだ。