198:榊原詩々の身世の謎(11更)_3

「好きだからって何でも許されると思ってるの?」

蒼井遥真は今、とても動揺していた。

若松冬音は演技をしているのか……

それとも自分が酔った勢いで暴走したのか?

昨夜の出来事について、何一つ覚えていない。蒼井遥真は深く息を吸い込んで、「冬音、まず落ち着いて。事態は君が想像しているようなものじゃない!」

「じゃあ、どういうことなの?」若松冬音は怒りを込めて言った。「私がどんなに下品な女だとしても、男の布団に自分から潜り込むようなことはしない!」

「冬音、君を下品だなんて言ってない。ただ、この件は不思議だと思うんだ。二人とも落ち着いて、ちゃんと話し合おう?」

若松冬音はシーツをきつく握りしめ、涙を流していた。

蒼井遥真の頭の中も混乱していた。

こんな事態は初めてだった。

どう対処すればいいのかもわからない。

今どうすればいい?

しばらくして、若松冬音は続けた。「これが私の初めてだったの。」

初めて。

その三文字が、蒼井遥真の顔を真っ青にした。

「冬音、俺は……」蒼井遥真は若松冬音を見つめ、何と言えばいいのかわからなかった。

彼は男だ。

こういう事が起きれば、結局は女の子が損をする。

結局のところ。

強姦犯は男性を標的にする。

蒼井遥真は若松冬音の意図がよくわかっていた。

これから彼女は自分に責任を取らせようとするはずだ。

そのとき、若松冬音が続けて言った。「安心して、責任なんて取らせないわ。私、若松冬音は言ったことは必ず守る。これからは、この出来事なんて無かったことにしましょう。」

そう言うと、若松冬音は布団をめくり、床に散らばった服を拾い上げ、一枚一枚着て、部屋を出て行った。

彼女の後ろ姿は決然としていて、未練は微塵も感じられなかった。

まるで、今日からもう本当に蒼井遥真のことを諦めたかのように。

蒼井遥真は若松冬音の後ろ姿を見つめ、表情には言い表せない何かが浮かんでいた。

すぐに、空気の中にドアの閉まる音が響いた。

蒼井遥真は思い切り自分の頬を叩いた。

パン!

この一発は相当強かった。

蒼井遥真の口角から血が滲んだ。

しばらくして。

蒼井遥真はようやくホテルの部屋を出た。

家に帰ると。

篠崎澪が心配そうに尋ねた。「遥真、昨夜はどこにいたの?」