198:榊原詩々の身世の謎(11更)_4

「わぁ、モチ子、可愛いわね!」

篠崎澪は新聞を受け取り、モチ子の頭を撫でた。

モチ子は「ワン」と一声鳴いて、まるで「何か手伝えることがあったら遠慮なく言ってね」と言っているようだった。

篠崎澪は笑いながら言った。「モチ子、リビングのドアを閉めてきて。」

モチ子はすぐに小走りで向かった。

篠崎澪は口を押さえて、「紅音、見て見て!こんなに賢い犬見たことないわ!」

言われたことを何でもやってくれる。

人間よりも言うことを聞く。

蒼井華和も驚いていた。モチ子がこんなに賢いとは思わなかった。

そのとき、篠崎澪は何かを思い出したように、「そうだ紅音、モチ子まだ朝ごはん食べてないわ。」

「具合でも悪いの?」

篠崎澪は首を振った。「具合が悪いわけじゃないと思うわ。様子を見てると、あなたに餌をもらうのを待ってるみたい。」

モチ子は元気そうだったから。

排泄も睡眠も運動もできている。

それを聞いて、蒼井華和は軽く頷いた。「モチ子、おいで。ごはんよ。」

その言葉を聞くと、モチ子はすぐに蒼井華和の側に駆け寄った。

使用人がモチ子の朝食を蒼井華和に手渡した。

蒼井華和は受け取って床に置き、「モチ子、食べなさい。」

モチ子はすぐに大きな口で食べ始めた。

大きな口で食べていたが、モチ子は食べ物を大切にしていて、もし犬用フードが一粒でも床に落ちたら、すぐに舐め取って食べた。

それを見て、篠崎澪は笑顔がこぼれた。「やっぱりね、モチ子はあなたが餌をあげるのを待ってたのよ。」

蒼井華和はモチ子を撫でた。

この小さな子が野良犬だった時、どれほどの苦労を重ねて、こんな用心深くて慎重な性格になったのか、想像もできない。

昼。

蒼井華和はモチ子を連れて散歩に出かけた。

彼女は自転車に乗り、モチ子は後ろを走っていく。

前に行き過ぎたときは、地面に座って、可愛らしい頭を傾げながら蒼井華和を待っていた。

人が近づいてくると、すぐに蒼井華和の側に寄った。

商店街に着くと、他人を怖がらせないように、蒼井華和はモチ子にリードを付け、口輪もつけた。

モチ子は大人しく、彼女についてきて、人を噛むこともない。

でも、誰もが犬好きというわけではない。

モチ子は非常に従順だった。

蒼井華和の動作にもよく従った。

フライドチキン店の前で、モチ子は足を止めた。