「わぁ、モチ子、可愛いわね!」
篠崎澪は新聞を受け取り、モチ子の頭を撫でた。
モチ子は「ワン」と一声鳴いて、まるで「何か手伝えることがあったら遠慮なく言ってね」と言っているようだった。
篠崎澪は笑いながら言った。「モチ子、リビングのドアを閉めてきて。」
モチ子はすぐに小走りで向かった。
篠崎澪は口を押さえて、「紅音、見て見て!こんなに賢い犬見たことないわ!」
言われたことを何でもやってくれる。
人間よりも言うことを聞く。
蒼井華和も驚いていた。モチ子がこんなに賢いとは思わなかった。
そのとき、篠崎澪は何かを思い出したように、「そうだ紅音、モチ子まだ朝ごはん食べてないわ。」
「具合でも悪いの?」
篠崎澪は首を振った。「具合が悪いわけじゃないと思うわ。様子を見てると、あなたに餌をもらうのを待ってるみたい。」
モチ子は元気そうだったから。
排泄も睡眠も運動もできている。
それを聞いて、蒼井華和は軽く頷いた。「モチ子、おいで。ごはんよ。」
その言葉を聞くと、モチ子はすぐに蒼井華和の側に駆け寄った。
使用人がモチ子の朝食を蒼井華和に手渡した。
蒼井華和は受け取って床に置き、「モチ子、食べなさい。」
モチ子はすぐに大きな口で食べ始めた。
大きな口で食べていたが、モチ子は食べ物を大切にしていて、もし犬用フードが一粒でも床に落ちたら、すぐに舐め取って食べた。
それを見て、篠崎澪は笑顔がこぼれた。「やっぱりね、モチ子はあなたが餌をあげるのを待ってたのよ。」
蒼井華和はモチ子を撫でた。
この小さな子が野良犬だった時、どれほどの苦労を重ねて、こんな用心深くて慎重な性格になったのか、想像もできない。
昼。
蒼井華和はモチ子を連れて散歩に出かけた。
彼女は自転車に乗り、モチ子は後ろを走っていく。
前に行き過ぎたときは、地面に座って、可愛らしい頭を傾げながら蒼井華和を待っていた。
人が近づいてくると、すぐに蒼井華和の側に寄った。
商店街に着くと、他人を怖がらせないように、蒼井華和はモチ子にリードを付け、口輪もつけた。
モチ子は大人しく、彼女についてきて、人を噛むこともない。
でも、誰もが犬好きというわけではない。
モチ子は非常に従順だった。
蒼井華和の動作にもよく従った。
フライドチキン店の前で、モチ子は足を止めた。