207：強気な蒼井兄さん、順調にサンプル収集_2

彼女は蒼井家の者たちと深い感情的な繋がりはなかった。

「妹が信頼できるからだ」蒼井琥翔は一言一句、非常に断固として言った。

蒼井陽翔は笑い声を漏らした。「つまり、紫苑は信頼できないということか？」

蒼井琥翔は眉をひそめた。「用事があるんだ。無駄話をする暇はない。さっさと出て行け！」

蒼井陽翔は背を向けて立ち去った。

できることなら、この家を出て、二度と戻ってこないでいたかった。

しかし。

それは無理だった。

蒼井琥翔は書斎のドアを閉め、高城ママと蒼井紫苑のサンプル採取の手配を始めた。

......

蒼井陽翔は地下駐車場に向かい、蒼井紫苑に会いに車を走らせた。

蒼井家を出た後、蒼井紫苑はアパートを借りて住んでいた。

実は彼女は全国各地に不動産を持っていた。

しかし、それらの家は全て両親からの贈り物だったため、今は住むことができなかった。

幸い、蒼井紫苑は前もってお小遣いを貯めていたので、住む場所すら見つからないということはなかった。

おそらく。

これが実の娘と養女の違いなのだろう。

実の娘がどんな過ちを犯しても、彼らは蒼井華和を責めることはないだろう。

しかし彼女は違った。

ちょっとした過ちを犯しただけなのに、両親は家も車も取り上げ、さらにはお小遣いまで止めてしまった。

蒼井紫苑は深いため息をついた。

今の困難に負けるわけにはいかない。

冷静にならなければ。

そのとき、ドアをノックする音が聞こえた。

蒼井紫苑は我に返り、すぐにドアを開けに行った。

ドアが開いた。

マスクとサングラスをかけた蒼井陽翔が外から入ってきた。

「お兄さん？」

蒼井陽翔を見て、蒼井紫苑は少し驚いた。

蒼井陽翔はマスクを外し、部屋の中に入った。

蒼井紫苑は後に続いて入り、蒼井陽翔に水を注いだ。「お兄さん、お水をどうぞ」

蒼井陽翔は水を受け取って一口飲み、それから部屋の環境を見回した。

ワンルームのアパート。

とてもシンプルな内装。

蒼井家の使用人部屋にも及ばない。

蒼井陽翔は眉をひそめた。「紫苑、この数日間、こんなところに住んでいたのか？」

蒼井紫苑はうなずいた。

「行こう、もっといい場所に移ろう！」蒼井陽翔は立ち上がり、蒼井紫苑の手を引いて外に向かった。