207:威厳ある蒼井兄さん、順調にサンプルを収集

蒼井琥翔は口先だけが上手かった。

人のことを語る時は、筋が通っているように見える。

自分のことになると、自分の過ちに全く気付かない。

「妹は人の陰口を言うような子じゃない」と蒼井琥翔は続けた。「勝手な推測はやめてくれ」

「勝手な推測だって?じゃあ、密室で何を話したんだ?」蒼井陽翔は今や蒼井琥翔に失望していた。「どう考えても、華和と紫苑は姉妹だろう!しかも紫苑は華和にあんなに優しかったのに、華和は何をした?紫苑が両親に追い出された時、一言も弁護せず、むしろ陰で刺すような真似をするなんて!本当に分からない、なぜ兄さんと次兄、それに両親までが華和をそんなに大切にするんだ!」

蒼井陽翔は想像できた。蒼井華和が書斎で蒼井紫苑の悪口をどれだけ言ったのかを。

結局、蒼井紫苑がいなくなれば、彼女が蒼井家唯一のお嬢様になるのだから。