「なに?」
榊原静華と周防誠一は呆然としていた。
二人とも、原田真雪が蒼井華和には関係ないと言うとは思ってもみなかった。
これでは蒼井華和から金を騙し取ることができない!
この老いぼれ!
得すべき時に得せず、得してはいけない時に必死で得しようとする!
監視カメラは壊れていて、目撃者もいない。原田真雪が蒼井華和に突き飛ばされたと言い張れば、蒼井華和は必ず賠償金を払わなければならないはずだったのに!
「お礼は結構です。お年寄りが無事で何よりです」蒼井華和は続けて言った。「警察官の方、私は先に失礼させていただきます。もし協力が必要な際は、いつでもご連絡ください」
「はい、わかりました」
榊原静華と周防誠一は蒼井華和の去っていく後ろ姿を見て、顔が歪むほど腹を立てていた。
数十万円がこうして消えてしまった!