「いいえ。」
「そんなはずがない!」
蒼井陽翔の家の監視カメラは彼女が自ら壊したのだから。
壊れた監視カメラがどうして有力な証拠を撮れるというの。
もし本当に何か撮られていたのなら、玲姉はとっくに監視カメラの映像を持ってきて対質していたはずよ。こんな脅し文句を言うはずがない。
「私は行っていない。行っていないものは行っていない。どうしてあなたたちは私が行ったと言い張るの!」ここまで言うと、蒼井紫苑は椅子から立ち上がった。「お兄さんに会わせて!直接話を聞かせて、どうして事実でもないことを作り上げたのか!お兄さんは私が一番信頼している人で、この世界で数少ない信頼できる親族なのに!どうして、どうしてこんなことをするの!」
最後には、蒼井紫苑は崩れ落ちるように大泣きし始めた。
彼女にはよくわかっていた。泣くべき時は泣き、怯えるべき時は怯えなければならないということを。
結局のところ。
彼女はまだ十八歳に過ぎないのだから。
玲姉は蒼井紫苑を見つめ、その目の奥には複雑な色が宿っていた。
明らかに。
彼女は蒼井紫苑の知能を過小評価していた。
そうだ。
もし蒼井紫苑が本当に殺人犯なら、こんなに早く尻尾を出すはずがない。
きっと完璧な犯行を遂げているはずだ!
「警察官さん、お願いです。お兄さんに会わせてください!一度だけでいいから!」蒼井紫苑は涙にまみれて懇願した。「事情を確認したいんです。どうして嘘をつくのか、本当に私の実の父を殺した人なのでしょうか?」
玲姉は取調室を出て、頭を抱えるように溜息をついた。
柚木浩流がすぐに近寄ってきて、「どうだった?」
「うまくいかなかったわ」玲姉は続けた。「今のところ、全ての証拠が蒼井陽翔が殺人犯だということを示している。事件当夜、蒼井陽翔と蒼井紫苑が確かに会っていたことを証明できる目撃者でも見つからない限りは」
「焦るな、早坂たちがもう調査に出ているよ」柚木浩流は何か思い出したように続けた。「そうだ、この件について蒼井家の人たちに知らせた方がいいかな?」
蒼井家は蒼井陽翔と絶縁状態とはいえ。
血のつながりという点では、蒼井陽翔はまだ蒼井家の息子なのだから、こんな大事が起きた以上、真っ先に蒼井家の者に知らせるべきだろう。