野種。
軽々しい形容詞一つで、蒼井紫苑の顔が青ざめた。
彼女は人にそう言われるのが一番嫌いだった。
蒼井家の養女だというだけで、他人は彼女をそう罵ることができるのか!
他人ならまだしも。
今や、蒼井陽翔までもがそう言うなんて!
人は誰でも間違いを犯す。
彼女だってたった一度の過ちを犯しただけなのに。
なぜ蒼井陽翔は彼女を許してくれないの?
蒼井華和さえ許せるのに!
蒼井華和が実の妹だからなの?
運命はなぜ彼女にこんなにも不公平なの?
蒼井紫苑の涙は糸の切れた数珠のように流れ落ちた。
その言葉を言い終えると、蒼井陽翔は背を向けて立ち去った。
後ろの警察官が彼の足取りに続いた。
しばらくして。
蒼井陽翔は留置所から出てきた。
外の日差しが眩しく、彼女は手で遮りながら、目には憎悪の色が満ちていた。