第28章 最も消し難きは美人の恩

「結城様?夏美に会いに来てくださったのですね。どうぞお入りください」林富岡は突然結城様を見かけ、夏川清美の言葉を無視して、熱心に招待した。

自分がこの人の義父になるはずだということを完全に忘れていた。

林富岡は気づかなかったが、鈴木の母娘ははっきりと聞いていた。あのデブ野郎がビデオを持っているって言ったけど、そんなはずがない!でも、もしないなら、なぜ人前でそんなことが言えるのか?

二人が不安に思っている間に、結城陽祐はすでに病室に入っていた。

林夏美の視線は瞬時に気品のある美しい男性に引き寄せられた。「結城様、いらっしゃいました」

そう言いながら無理して起き上がり、さっきまで蒼白だった顔が一気に紅潮し、可愛らしい顔には恋する乙女の恥じらいが満ちていた。

結城陽祐は熱心な視線を送る林夏美に一瞥も与えず、代わりに隅に縮こまっている田中くんと氷川くんに目を向けた。「警察官か?」