夏川清美は午後の黄昏の中に立って遠くの車影を見つめ、目に満ちた不信感で、約束した紳士的な振る舞いはどこへ行ったのかと思った。
美人は本当に気分屋だな。
幸い、もう市街地に着いていたので、夏川清美は手近なタクシーを拾って誠愛病院へ向かった。
病室に入ると、警察官もすでに到着していた。
「よくも顔を出せたな!」林富岡は開口一番に怒鳴りつけたが、夏川清美の後ろにいる警察官を見て一瞬止まり、「これは何のつもりだ?」
「お父さん、おばさんと明里が重傷を負ったと聞いて、犯人を見逃すわけにはいかないから、警察に通報しました」夏川清美は正義感に燃えた様子で言った。
林富岡は一瞬戸惑い、妻と継娘を見て、そして真剣な表情の娘を見て、もしかして清美のことを誤解していたのだろうか?
「この二人が被害者ですね?当時の状況を説明していただけますか」南町の林家は信州市の名門の中でトップ10には入らないものの、最近京都の結城家との婚約が噂され、長女は結城家の病弱な息子に子供を産んだという。