第38章 彼女のカードを全て停止しろ

夏川清美は何度も雲おばさんの番号をかけたが、まだ通じなかった。

林家に着くと、健二は身分が特殊なため外で待っていた。清美は本邸に戻らず、後ろの小さな建物に向かった。近づく前に冷たい声が響いた。「止まれ!」

清美は足を止め、振り返ると、林富岡が階段の上に怒り狂って立っていた。顔中怒りに満ちていた。

「母親と姉の生死も気にせず、夜遅くまで帰らないなんて、林夏美、お前は本当に良心もなければ恥も知らないな」林富岡は清美が動かないのを見て、末子の言った言葉を思い出し、この娘がますます見知らぬ人のように感じられた。

「お父様の言葉がよく分かりません。私の母は何年も前に亡くなり、一生私一人しか子供がいませんでした。どこに母親や姉がいるというのですか?」以前なら、彼女はまだ林家でその母娘と駆け引きをし、この所謂父親の支持を得ようと思っていたかもしれない。

しかし昨日、林富岡が是非をわきまえずに彼女に手を上げようとしたことから、清美は分かった。林富岡という人は是非の区別がつかないだけでなく、近視眼的な利益ばかりを追求する人間だということを。

そんな人が一番愛しているのは自分だけだ。

かつての林夏美はこの父親の愛を必要としていたのかもしれない。そのために屈辱に耐え、一歩一歩その母娘に尊厳を踏みにじられ、体を傷つけられ、最後にはその母娘の出世の道具となり、命まで失った。

しかし清美はそうはならない。

見抜いてしまえば、もう我慢はしない。

林富岡は臆病で物事を恐れていた娘がこんな風に自分に話すとは思ってもみなかった。老いた顔が怒りで真っ赤になった。そのとき、鈴木政博が彼の後ろに立ち出た。「義兄さん、姉は貴方の家に嫁いで八九年、ずっと清美さんを実の子のように可愛がってきました。今、病床にいる姉がこんな言葉を聞いたら、どんなに心が痛むことでしょう」

「この不届き者め、今すぐお前を連れて母親に謝らせる」林富岡は既に激怒していたところに、鈴木政博にそそのかされ、さらに怒りを増した。

「清美さんは昨日、雲さんにカードを渡していましたが、きっとお金を手に入れたんでしょう…」

「なるほど、金を手に入れたから態度が大きくなったというわけか。行け、彼女のカードを全部止めろ」鈴木政博の言葉を聞いて、林富岡は悟ったように言った。

「これは…」