鈴木政博は鈴木末子に電話をかけた。
カードは鈴木末子が作ったものだから、当然カード番号を一番よく知っていた。数分もしないうちに夏川清美のカードは凍結された。
昨日から既に苛立っていた病床の林夏美は、このニュースを聞いて、ようやく気持ちが落ち着いた。「どれだけ調子に乗れるか見ものね。お金がなければ学費も払えないでしょう。いつか私たちに土下座して頼みに来るはずよ」
「安心して養生なさい。婚約式まであと二ヶ月ちょっとよ。もう衝動的な行動は控えめにね。あなたが結城家の奥様になれば、あの下賤な女なんて何の価値もないわ」鈴木末子は娘を慰めた。
その言葉を聞いて、林夏美の顔に得意げな表情が浮かんだが、すぐに曇った。「ママ、昨日どうして正陽様があのデブを助けたの?」
「それは...」この件について触れると、鈴木末子も少し不思議に思った。しかし、正陽様の様子を見る限り、夏川清美が子供の母親だと知っているようには見えなかった。となると唯一の可能性は、「夏美ちゃん、物事は表面だけで判断してはいけないわ。正陽様はあなたを守ろうとしていたのかもしれないわ」
林夏美は驚いて固まった。「ママ、あの人は私にあのデブに謝罪の平手打ちを二回させたのよ。それが私を守ることになるの?」
「昨日あの下賤な女の言い方からすると、動画があるみたいだったわ。もし彼女がその場で動画を出していたら、私たちは終わっていたわ。でも正陽様が介入したおかげで、夏川清美は動画を出す機会すらなかった。これって守ってくれたことにならないかしら?」鈴木末子は考えに考えて、きっとそういうことだと思った。
その時、正陽様は自ら夏美が未来の結城家の奥様だと言ったのだから、夏美を認めているということだろう。
「本当?」林夏美は何か違和感を覚えたが、それ以上に喜びを感じていた。
正陽様が彼女を守ってくれたということは、心の中で少なからず彼女のことを気にかけているということではないだろうか?
「ええ、しっかり養生して。結城家に入れば、あんなデブを始末するなんて造作もないことよ」鈴木末子は結城家のことを考えると、目に貪欲な光が宿った。
林家どころか、信州市の富豪を半分集めても結城家一つにも及ばないだろう。
結城家に嫁げるなんて、鈴木家にとって最高の栄誉になるはずだ。